私が安全保障関連諸法案に反対するのは、軍事力の誇示によって国際的な紛争を抑止しようという、その基本思想を信じることができないからです。
集団的自衛権によって手に入るであろう「抑止力」は、仮に当面の軍事的緊張を凍結できたとしても、その緊張の原因を取り除くことには役立たないと思います。それどころか、より強力な軍事力を持とうとする欲求を、周囲の国が高めることにつながるでしょう。その行き着く先は地球的規模の破滅しかありません。
また、今国会での審議において、政府が安全保障関連諸法案の全貌を語っていないと思われる点も、重大な問題点だと考えます。政府の諸法案の必要性についての説明の核心は、要するに集団的自衛権によって「日本の安全」が確保されるという点にあります。
しかしながら、なぜ日本の安全のために自衛隊の世界的展開を可能にする必要があるのか、この点についての説明はいまだなされておりません。多くの論者が指摘するように、ここには「アメリカの世界戦略への協力」という、日本の安全の確保を遙かに超える領域に自衛隊を活用しようという意図があると思います。その点に触れようとしない現政府には不信感を持たざるを得ません。
最後にあげたい理由は、今回の諸法案の提出者である現政府すら、これらが国民の支持を得られると思っておらず、国民的支持の希薄さが明らかだという点です。先日の自民党総裁選において、安倍総裁が無投票当選となりましたが、現政府が躍起になって対立候補の立候補を押さえ込んだ理由は、党員投票における批判票の噴出を恐れたためであると、私は考えます。また2014年末に、消費税率引き上げ先送りの是非を国民に問うという理由で、不要説を押し切って総選挙に打って出た安倍首相が、これだけ国民的議論の起きている法案について国民の信を問おうとしないのはどういうわけでしょうか。
以上の理由から、私は安全保障関連諸法案に反対します。
「安全保障関連法案」に反対する岐阜大学関係者有志の声明」賛同者
(山本公徳 岐阜大学准教授)
※ 安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ