安倍政権は閣議決定で憲法9条の解釈を変更し、これまで憲法違反とされてきた集団自衛権の行使は合法であると言う。本来ならば、国の姿を根本的に変えてしまうこのような重要な決定は、憲法改正を要するものである。
さらに安全保障関連法案の合憲性について、法学者の間では違憲であるとする意見が圧倒的である。国際法上はどうか。
主権国家の個別自衛権と集団的自衛権はともに国連憲章で認められているが、後者の行使には重要な条件がある。
自国や同盟国への武力攻撃や、国際の平和を脅かす事態が発生した際に、国連がこれに対応することを原則とし、国連の対応が確保されるまでの暫定的措置として、集団的自衛権の行使を認めている。
日本の集団的自衛権の行使は、同盟国アメリカとの合同軍事行動を意味するが、日米が国連安保理事会に提議することも、常任理事国の中国やロシアが支持することも考えられない。
つまり、この法案は憲法に反し、国際社会に支持されない軍事行動を意図するものである。ましてや、集団的自衛権の行使には国民の大多数が反対している。
これを強行で通そうというのは、国民主権を覆す暴挙である。
廃案を望む。
(赤羽恒雄 ミドルベリー国際大学院モントレー校教授)