【声明文#7】安保関連法案廃案を求める岩手県の大学関係者・研究者・弁護士有志

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 市民の皆さん。私たち「安保関連法案廃案を求める岩手県の大学関係者・研究者・弁護士有志」は7月15日に記者会見を開き、以下のようなアピールを発表しました。

 同アピールは、岩手県内の大学関係者・研究者・弁護士を対象として、7月6日から賛同署名活動を開始したものであり、7月15日朝までの10日足らずで呼びかけ人・賛同者合わせて345名になりました。そして、国会情勢に鑑み、法案が衆院特別委員会で強行採決された15日に前倒しで記者会見を行いました(当初は、賛同署名活動を20日まで行い、22日に記者会見を行う予定でした)。最終的には呼びかけ人・賛同者は368名になりました。

 これだけの短期間で368名もの方から賛同が寄せられたことは、多くの方々が、安保関連法案がそもそも憲法違反であり、戦後日本の平和主義を根底から掘り崩すものであることを認識し、このような情勢に危機感を持っておられることの表れであると捉えています。

 市民の皆さん。立憲主義・法の支配・平和主義の否定に繋がる安保関連法案の廃案を求めて、さらに大きな声をあげていきましょう。

有志アピール事務局 横山英信(岩手大学)


2015年7月15日

私たちは専守防衛逸脱・憲法違反の安全保障関連法案の廃案を求めます

岩手県の大学関係者・研究者・弁護士有志 368名
岩手大学教職員192名
盛岡大学教員17名
岩手県立大学教員25名
その他研究者18名
弁護士13名
大学退職教職員等103名
(代表:高塚龍之・岩手大学名誉教授)

 市民の皆さん。安倍内閣は5月15日に、武力攻撃事態法・周辺事態法・自衛隊法・PKO協力法など既存の10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と新設の「国際平和支援法案」からなる安全保障関連法案を国会に提出し、会期を大幅延長してまで、今の国会で成立させようとしています。

解釈改憲を行った昨年の閣議決定は立憲主義破壊・憲法違反です

 昨年7月1日、安倍内閣は集団的自衛権行使を容認し、海外での武力行使を含む自衛隊の任務を拡大する閣議決定を行いました。この閣議決定は、約60年に亘る立法・行政・司法・学界などにおける議論を踏まえた従来の憲法9条の解釈=「専守防衛(相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する)」を、国会審議や国民的議論に一切かけることなしに、一内閣の勝手な判断で変更しました。既に確立していた憲法解釈を政府自身が勝手に変更することは、憲法の法的安定性を壊すもので、立憲主義破壊・憲法違反です。このたびの安全保障関連法案は、この閣議決定の具体化に他なりません。

安全保障関連法案は憲法9条に違反しています

 安全保障関連法案では、「我が国の平和及び安全に重大な影響を与える事態」=「重要影響事態」や「国際社会の平和及び安全を脅かす事態」=「国際平和共同対処事態」が発生した際に、自衛隊は「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこででも、アメリカなど他国の軍隊に対して「武器や弾薬の提供」などの「後方支援活動」や「協力支援活動」を行うことができるとされています。これは、戦闘現場のまさにすぐ側で、自衛隊に他国の軍隊の戦闘行為と一体化した「兵站」活動を行わせるもので、「兵站」活動を行う自衛官は当然ながら攻撃の対象となり、生命の危険にさらされます。「重要影響事態」の概念が極めて曖昧なため、政府の判断次第で自衛隊の兵站活動が限りなく拡大していくことになります。

 国連平和維持活動(PKO)では、自衛隊の任務として、国連が直接関与しない活動において「駆けつけ警護」や「治安維持活動」などを新たに追加し、武器使用の拡大を認めました。「兵站活動」も「駆けつけ警護」や「治安維持活動」も自衛官の生命を危険にさらすものであり、自衛隊の武器使用・武力行使につながります。

「海外での武力の行使」は憲法9条違反です。

 安全保障関連法案では、アメリカ軍などの武器等の防護を行うために自衛隊に武器使用を認めることを規定しています。これは自衛隊が平時から軍事演習や警戒監視活動などアメリカ軍の「同盟軍」としての役割を果たすことを意味し、「専守防衛」の域を超えて、アメリカの軍事体制に日本をいっそう巻き込むことになります。

安全保障関連法案は際限のない自衛隊の海外での武力行使に道を開きます

 安全保障関連法案では、日本が直接攻撃を受けていなくても、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」=「存立危機事態」が発生した際には集団的自衛権が行使できることになっています。

 ところが、この間の国会審議で「存立危機事態」に関する政府の答弁が二転三転していることからも明らかなように、その定義は極めて曖昧であり、「存立危機事態」を認定する客観的基準はありません。「存立危機事態」かどうかは時の政府の判断に委ねられ、政府が恣意的な判断を行えば、集団的自衛権行使の範囲は際限なく広がることになります。安倍内閣は「集団的自衛権行使は限定的」と説明していますが、「限定」するための歯止めは何もありません。

アメリカ追従の会期大幅延長は国民を無視したものです

 6月22日、政府は会期を過去最長の95日間とする、大幅延長を決めました。

 安倍首相は会期延長の理由を「『丁寧に議論せよ』という声に耳を傾け、戦後最長となる審議時間を取り、じっくり議論する意思を国民に示して理解を得たい」としています。しかし、最新の世論調査(共同通信)では、同法案をめぐり「違憲」が56.7%、「反対」が58.7%、「今国会の成立反対」が63.1%にも上り、会期の大幅延長は国民の大半が反対する同法案を何が何でも通そうとする暴挙です。

 会期延長にはまだ理由があります。

 安倍首相は、安全保障関連法案を国会に提出する前の4月30日に、アメリカ議会における演説で、「安全保障関連法案をこの夏までに成立させる」と約束しました。これ自体、国民主権を無視し国会を軽視したもので、許されませんが、今回の大幅延長は、この“約束”を実行するためのものであり、アメリカ優先で、国民の意思を無視する暴走です。

専守防衛を逸脱し、憲法に違反している安全保障関連法案は廃案に

 憲法学者を参考人として招いた6月4日の衆議院憲法審査会において、与党推薦を含めて3名の参考人全員が「安全保障関連法案は憲法違反」との見解を示し、「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」に現在230名を超える憲法研究者が賛同者として名を連ね、 6月18日に日本弁護士連合会が安全保障関連法案について「日本国憲法の立憲主義の基本理念並びに憲法第9条等の恒久平和主義と平和的生存権の保障及び国民主権の基本原理に違反して違憲であるから、これらの法律の制定に強く反対する」という意見書を発表しました。6月22日には2人の元内閣法制局長官も「違憲」を言明しています。これらのことは、安全保障関連法案が憲法・法律の専門家から見て、明確な憲法違反であることを示しています。

 「専守防衛」を逸脱し、日本が他国から武力攻撃されてもいないのに自衛隊の海外での武力行使に道を開く安全保障関連法案は、日本を他国の戦争に巻き込むものであり、日本の平和と安全をかえって危うくします。また、海外での武力行使を実際に行い、生命の危機にさらされるのは、安全保障関連法案を押し通そうとしている政治家ではなく、自衛官、とくに活動の前面に立たされる若い自衛官です。私たちは若者が「殺し、殺される」ことになる事態を黙って見ていることはできません。

 私たちは、国会に対して、専守防衛を逸脱し、憲法に違反する安全保障関連法案を廃案にするよう強く求めます。
 
※安保法制に反対する団体の声明文はこちら