日刊IWJガイド・非会員版「岸田政権はアベノミクスの失敗を軍事産業と原発産業への傾斜で乗り切ろうとしている! エコノミスト田代秀敏氏へ緊急取材!」2023.1.10号~No.3771号


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~長期金利が0.5%の日銀上限に到達! 他方、11月の実質賃金は3.8%減! 実は、すでに国内総所得(GDI)の成長率は、年率換算でマイナス0.003%だった! 岸田政権はアベノミクスの失敗を軍事産業と原発産業への傾斜で乗り切ろうとしている! IWJは、エコノミスト田代秀敏氏へ緊急取材!

■2010年12月の創業以来、IWJは最大の経済的危機です! 12月のご寄付の実績が確定しました! 12月1日から12月31日までのご寄付は241件、350万7570円でした。12月の月間目標額390万円の90%です。第13期が始まった8月から12月までの5ヶ月間の累積の不足額は970万9900円にまで膨れ上がってしまいました! 皆さまのご支持・応援、会費、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ、活動規模を縮小しても立ち行かなくなります。今後とも精いっぱい頑張ってまいりますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

■【中継番組表】

■「ペトロダラー」から「ペトロユアン」へ、国際基軸通貨の覇権交代か!? 中国の習近平国家主席が12月、サウジアラビアで湾岸諸国との首脳会合で「石油・ガス貿易の人民幣建て決済推進」を演説! しかし共同声明では触れられず! IWJ記者の取材にJOGMEC原田大輔氏は「決済通貨多様化の一選択肢となりつつある」とコメント!(前編)
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■はじめに~長期金利が0.5%の日銀上限に到達! 他方、11月の実質賃金は3.8%減! 実は、すでに国内総所得(GDI)の成長率は、年率換算でマイナス0.003%だった! 岸田政権はアベノミクスの失敗を軍事産業と原発産業への傾斜で乗り切ろうとしている! IWJは、エコノミスト田代秀敏氏へ緊急取材!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 1月6日の国内債券市場で長期金利の指標となる新規発行の10年物国債利回りが0.5%を付けました。日本銀行(以下、日銀)が22年12月20日に長期金利の上限を「0.5%程度」へ政策変更して以降、初めての上限達成となります。

 この金利水準は、2015年7月以来7年半ぶりの高水準となります。

※長期金利、0.5%の日銀上限に到達 政策修正後初めて(日本経済新聞、2023年1月6日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB058GK0V00C23A1000000/

 6日付『日本経済新聞』は、「経済実勢を踏まえた日本の長期金利水準は0.5%よりも高いとの見方が多く、国債の利回り上昇(価格の下落)につながっている」と分析しています。

 日銀が公式に表明している利上げの目的は、「債券市場機能の回復」です。

 日銀の金利上昇の政策変更によって、新規発行債券に関しては、市場参加者は金利相当分を割引して購入するため、安く入手できることになります。

 新規発行債券が安くなれば、連動して、発行済み債券の流通価格も下落します。

 日銀の金利上昇政策によって、手元の債券の価値が下がることが明白なので、早期に手放して資産価値の目減りを抑えたいという判断が市場参加者に働き、債券の売りが活発化し、債券市場機能の回復につながるという目論見です。

 しかし、債券市場機能の回復が目的と言うなら、年明けに金利があっという間に上限に達し、日銀の政策によって0.5%で推移することになれば、金利0.25%のまま推移したことで債券市場が機能不全に陥ったのと、同じことになります。

 債券市場の機能回復は、日銀が金利を上げた一瞬だけしか達成されません。

 そもそも、債券市場の機能不全は、日銀が発行済み国債残高全体の50%以上を保有するという債券市場のいびつな構造が原因であることは明白です。

 日銀が最大の国債保有者であり、国債は完全に価格管理された商品になっているため、金融商品としての魅力がなく、金利を上げたときだけ、取引が活発になるということになります。

 異次元金融緩和の手段として国債を大量に購入し保有せざるを得なかった日銀が招いた事態です。

 日銀の言う「債券市場の機能回復」は、日銀の国債保有率が50%以上という債券市場の構造的な問題が原因ですから、今に始まったわけではありません。

 唐突に、この局面で、日銀が、利上げしたのは、「利上げしない場合のベネフィット・副作用」と「利上げした場合のベネフィット・副作用」を比較検討した結果、利上げせざるをえなくなったということでしょう。

 これは、黒田総裁が進めてきアベノミクスの失敗を、政策変更という形で認めたということに他なりません。

 この点について、岩上安身のインタビューでお馴染みのエコノミスト田代秀敏氏は次のように述べています。

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■2010年12月の創業以来、IWJは最大の経済的危機です! 12月のご寄付の実績が確定しました! 12月1日から12月31日までのご寄付は241件、350万7570円でした。12月の月間目標額390万円の90%です。第13期が始まった8月から12月までの5ヶ月間の累積の不足額は970万9900円にまで膨れ上がってしまいました! 皆さまのご支持・応援、会費、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ、活動規模を縮小しても立ち行かなくなります。今後とも精いっぱい頑張ってまいりますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

 おはようございます。IWJ代表の岩上安身です。

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 第13期が始まった8月から12月末まで、月間目標を下回る月が続き、この5ヶ月間の累積の不足額は970万9900円にまで膨れ上がってしまいました。5ヶ月間で目標額よりも1000万円近く不足していますから、このペースだと、第13期が終わる頃には、2000万円以上不足することになりそうです。

 12月1日から12月31日までのご寄付・カンパは、241件、350万7570円でした。この金額は、12月の月間目標額390万円の90%です。ご支援のお願いにこたえてくださった皆さま、本当にありがとうございます。12月は月間目標額の9割のご寄付・カンパが集まったことは、我々にとってとても大きな励ましとなり、勇気づけられました。心より感謝申し上げます。

 しかしながら、12月もご寄付・カンパが月間目標額に達しなかったことで、実際には累積の不足額は先月より増えてしまい、上記の通り970万9900円となってしまいました。1月はこの金額に月間の目標額である390万円をあわせ、1360万9900円が必要となります。

 IWJの内部留保も底を尽き、12月は、キャッシュフローが不足したため、経理から依頼されて、私、岩上安身が、個人的な私財から、500万円をIWJにつなぎ融資することでしのぐことになりました。

 この状況が続くと、1月も同じように私が私財を出して支えないといけなくなり、私の貯えが尽きると、その時点でIWJは倒れてしまいます。

 1月は1日から6日までの6日間で、ご寄付は18件、22万9000円です。単独月間目標額390万円の6%に相当します。

 厳しい状況の中、ご寄付をお寄せいただいた方々、誠にありがとうございました。

 IWJの規模と活動に、抜本的な改革が必要であり、規模を縮小し、コンパクトで最優先の情報をお届けする体制を再構築したいと思っています。今よりコンパクトなスペースのオフィスに移転することも真剣に検討中です。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、ご寄付が急減してしまうと、私が私財を投じて一時的に支えても、私の蓄えなどたかがしれたものですので、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。IWJの運営は会員の方々の会費とご寄付・カンパの両輪によって成り立っていますが、それが成り立たなくなってしまいます。

 IWJは、市民の皆さま、お一人お一人が会員となっていただくことと、ご寄付・カンパをいただくことで、政治権力におもねり、広告スポンサーに牛耳られている記者クラブメディアとは一線を画した、独立市民メディアとしての活動を貫いてきました!

 権力に不都合であっても、真実を追及し、権力の監視を行う「ウォッチ・ドッグ」の役割を果たし続けることが可能になります。これも、市民の皆さまのお支えがあってのことです。

 また、大新聞、大手テレビが、足並みをそろえてウクライナ紛争において情報操作を行っている現状を御覧になればわかるように、権力と大資本から距離を置く独立メディアが存在しないと、真実はまったくわからなくなってしまいます。それは結局のところ、めぐりめぐって、私たち自身の生存や生活を、脅かすことになります。

 昨年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻しました。その後に起きた西側メディア・コントロールは、凄まじいの一言に尽きます。「ロシア=悪、プーチン=悪魔・狂人」、「ウクライナ=善、ゼレンスキー大統領=世界の自由と民主主義を守る英雄」の善悪二元論がメディアを席巻しました。

 4月23日には、アゾフ大隊の司令官へのテレビ・インタビューが行われ、TBSの看板キャスターの金平茂紀氏が「ロシア側は、アゾフ連隊のことを『ネオナチズムの象徴だ』というふうに非難していますけど、怒らないでくださいね」「アゾフ連隊は極右団体だったというような情報は、フェイクニュースだっていうふうに思っているんですね?」とアゾフをホワイト・ウオッシュする演出が行われました。

 そのインタビューの際に流された映像では、司令官の腕にはアゾフ連隊旗、隊員の腕のワッペン、ネオナチの象徴である司令官の胸にはナチス親衛隊のシンボル(ヴォルフスアンゲル)にはぼかしが入っていました。

※【IWJ速報4月24日】ロシア「『ロ軍が化学、生物、核兵器を使用』と、米国政府が挑発を準備」と発表! TBS『報道特集』は「ヴォルフスアンゲル」にぼかしを入れ、アゾフ連隊を「ナチスでない」と紹介! 2022.4.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/505063

 公安調査庁はホームページの「国際テロリズム要覧」から「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」などの記載を削除しました。

 国会では、紛争当時国の一方だけを招いて行われたゼレンスキー大統領のビデオ演説に、与党だけではなく、れいわ新選組を除く野党議員までもが皆、スタンディング・オベーションを送りました。

※スクープ! 驚くべき真実!! ウクライナ紛争最大のタブー! ウクライナで弾圧されている人々の生の声(1)密告社会ウクライナ!「政府に反対する者は誰でも『親ロ派』! 武装民族主義者があなたを『処理』する」! 2022.6.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/506815

 戦況は、日本のマスメディアによれば、いつもウクライナ軍が優勢でした。「ウクライナ軍が健闘」、「ウクライナ軍が反撃」、「ウクライナ軍が奪還」。まるで第2次大戦中に行われた「大本営発表」です。

 ウクライナ軍には、米国からロシアの年間軍事費の半分にあたる軍事支援が送り込まれています。これほどの武器・兵器が注ぎ込まれれば、ロシア軍側が苦戦しないはずはありません。しかし、現実として、この1月の時点では、ロシア軍とドネツク・ルガンスク人民共和国軍側がウクライナの東部南部の4州を占拠しています。つまり、大局を見れば「いつもウクライナ軍が優勢」であったはずはありません。

 東部の要衝都市・マリウポリとセベロドネツクを奪われると、ウクライナ軍側は、テロ攻撃ともいうべき、ザポリージャ原発への砲撃を激化させました。ザポリージャ原発はロシア軍側が占拠しているのですから、ロシア軍側が攻撃するはずがありません。

 しかし、西側のメディアは「ロシア軍による攻撃」だと、ゼレンスキー政権の発表をそのまま流し続けました。現地を調査したIAEA(国際原子力機関)も、現地調査を行ったのに、行った攻撃主体を今に至るまで明らかにしませんが、そうしたIAEAのおじけついた対応からもウクライナ軍側による攻撃であると発表できない、強い力で、圧力をかけられている様子がうかがえます。

 「嘘は大きければ大きいほどバレない」といいます。ウクライナ紛争をめぐるメディア・コントロールの範囲は、西側メディアを覆ってしまうほど広く、IAEAのような国際機関であっても、西側の圧力に従わされてしまいます。

 IWJは、西側はもちろん、紛争当時国であるロシアやウクライナ、そして中国やインドなどの第三国のメディア、政治家、知識人の発言、米国の政策やシンクタンクのレポートなどを幅広く情報を集め、それぞれを付き合わせながら検証を行い、それぞれの時点で最も確からしいと思われる情報をお届けしてきました。

 私、岩上安身は、多くの研究者・専門家へのインタビューを通じて、米国が計画した「米露代理戦争」であるウクライナ紛争の実相を浮かび上がらせ、これが日本列島を戦場にする「米中代理戦争」につながる危険性があると、警鐘を鳴らしてきました。

 私は、ソ連崩壊前後のロシアを足かけ6年かけて取材しています。ウクライナ紛争は2014年のユーロマイダン・クーデターからとらえるべきだ、という声がようやく少しずつ聞こえるようになってきました。さらに遡って、ソ連崩壊の1991年から見ると、また違う世界が見えてきます。絶版となっていた私の著作『あらかじめ裏切られた革命』を日刊IWJガイド誌上で掲載しましょう、という提案をIWJスタッフから受け、復刻連載を開始することにしました。

 岩上安身とIWJが2022年に行なってきたウクライナ紛争関連の報道・取材・インタビューを、2022年末から2023年初めにかけて特設サイトにおいて公開してきましたが、この公開は1月15日まで、延期します。公開する新春特番でまとめます。このような形で、ブレることなく、ウクライナ紛争の実相を伝えてきたメディアは他にはないと自負しています。ぜひ、IWJ会員となって御覧ください。

 我々のような、客観的・公平な視点に立つ独立メディアが存在しなければ、この事態を人々が正確に知る手がかりがひとつ失われてしまいます。独自の視点で真実の報道を続けるIWJの存在価値を、ご理解いただき、お支えいただければと思います。

 2022年のもう一つの大事件は、安倍晋三元総理の銃殺事件とそれによって引き起こされた統一教会問題です。

 安倍元総理の銃殺事件は、まさに私が、孫崎享氏にインタビューを行った日に起きました。孫崎氏は、その場で安倍氏銃撃事件に関する報道がおかしい、不自然だ、と看破しました。山上容疑者の殺害行為の認否も明らかにしないうちに、メディアが揃って「動機は政治信条とは関係ない」とまず打ち出したからです。

※安倍元総理襲撃事件の報道は統制されている!?「今必要なのは『平和を創る道』の探求! 第2弾」~岩上安身によるインタビュー 第1081回 ゲスト 元外務省国際情報局長 孫崎享氏 2022.7.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/508501

 まさにその後、「動機」をめぐって、統一教会の名前が徐々に浮上し、岸田政権だけではなく、自民党という「保守」政党の根幹に関わるような、統一教会との癒着関係が次々と明らかになりました。

 12月16日、岸田総理は「安保3文書」の改定を閣議決定したと発表しました。改定された「安保3文書」では、「北朝鮮・中国・ロシア」という日本にとって最も近い隣国であり、かつ核保有国である3カ国を名指しで「脅威・懸念」と明記しています。

 その北朝鮮の核ミサイル開発に、統一教会が日本人信者から搾り上げた数千億円ともいわれている巨額の献金が使われたかもしれないのです。統一教会と癒着し、捜査も抑制してきた自民党が「何をか言わんや」です。

 岩上安身とIWJが2022年に行なってきた統一教会問題関連の報道・取材・インタビューも、2022年末から2023年初めにかけて公開している新春特設サイトにまとめています。ぜひ、IWJ会員となって御覧ください。

 また、改憲による緊急事態条項の創設は、統一教会が自民党の背中を押して、実現に向けて推進してきた政策です。統一教会という「反日・反社会的カルト」を、日本社会から追放し、政治への介入をやめさせるとともに、この危険な緊急事態条項の憲法への導入を阻止するために、私と、IWJのスタッフは、全力で立ち向かいたいと思います!

 皆さまにはぜひ、ご支援いただきたく、IWJの存続のために、会員登録と緊急のご寄付・カンパによるご支援をどうぞよろしくお願いしたく存じます。

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 また、休会中の皆さまは、メールやお電話をいただければ、すぐに会員を再開できます。一度退会された方でも、改めて申し込みをいただくことで再び会員になっていただくことが可能です。

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※以下は、IWJの活動へのご寄付・カンパを取り扱っております金融機関名です。どうぞ、ご支援のほどよろしくお願いします。

みずほ銀行
支店名 広尾支店
店番号 057
預金種目 普通
口座番号 2043789
口座名 株式会社インデイペンデント ウエブ ジヤーナル

城南信用金庫
支店名 新橋支店
店番号 022
預金種目 普通
口座番号 472535
口座名 株式会社インディペンデント.ウェブ.ジャーナル

ゆうちょ銀行
店名 〇〇八(ゼロゼロハチ)
店番 008
預金種目 普通
口座番号 3080612
口座名 株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル カンリブ

 IWJホームページからも、お振り込みいただけます。

※ご寄付・カンパのお願い
https://iwj.co.jp/join/pleasehelpus.html

 どうか、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます!

岩上安身

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◆中継番組表◆

**2023.1.10 Tue.**

調整中

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◆中継番組表◆

**2023.1.11 Wed.**

調整中

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■「ペトロダラー」から「ペトロユアン」へ、国際基軸通貨の覇権交代か!? 中国の習近平国家主席が12月、サウジアラビアで湾岸諸国との首脳会合で「石油・ガス貿易の人民幣建て決済推進」を演説! しかし共同声明では触れられず! IWJ記者の取材にJOGMEC原田大輔氏は「決済通貨多様化の一選択肢となりつつある」とコメント!(前編)

 ロシアによるウクライナ侵攻に対する米国主導の対露制裁を契機に、基軸通貨としてのドルから人民幣(=人民元)への移行、「ペトロダラー」(ドル建てでの国際原油取引)から「ペトロユアン」(Petro-yuan、人民幣での国際原油取引)への覇権交代が取り沙汰されています。

※オイルマネーと原油取引のドル建て表示(公益財団法人国際通貨研究所)
https://www.iima.or.jp/abc/a/3.html

※《ドル没落》金本位、原油本位、次は何本位? 対露制裁でほころぶ通貨体制=藤和彦(週刊エコノミストオンライン、2022年6月13日)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220621/se1/00m/020/023000c

 昨年12月9日にサウジアラビアで行われた中国・湾岸協力会議(GCC)首脳会議で、中国の習近平国家主席が演説の中で、「石油・ガス貿易の人民元建て決済を推進する姿勢を表明した」と表明しました。

※再送中国アラブ関係「新局面」、元建て取引推進で米揺さぶり 習氏(ロイター、2022年12月9日)
https://jp.reuters.com/article/china-saudi-arabs-idJPKBN2ST1VQ

※習近平氏「石油取引で人民元決済を」 アラブ首脳会議(日本経済新聞、2022年12月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR09DY80Z01C22A2000000/

 しかし、この習近平氏の演説は、日本国内では上記の『ロイター』と『日本経済新聞』、あとは一部の株式市場のニュースが取り上げた程度で、大きくは報じられていません。

 「ペトロダラー(Petrodollar)」は、「石油(petroleum)」と「ドル(dollar)」の合成語です。同じく「ペトロユアン(Petro-yuan)」は、「石油」と「人民幣」の合成語です。「ペトロダラー」から「ペトロユアン」への移行とは、米国の単独覇権であった世界秩序が崩れて、新興国・中国に覇権の一部が移行することを意味します。

 米国の単独覇権は、軍事力や経済力だけで支えられてきたのではありません。石油取引の決済ができる通貨はドルだけ、という特権的な「ペトロダラー」体制が、機軸通貨としてのドルの価値を支え、米国の単独覇権構築の柱のひとつとなってきたのです。いわば、米国の覇権は「石油本位制」に立脚しているのです。

 資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は、2022年7月6日付け『朝日新聞GLOBE+』で、「ペトロダラー体制」について、以下のように述べています。

 「石油取引の通貨をドルに一元化することで、サウジアラビアなど産油国が石油を売って得たドルで米国債を買う再循環が構築された。1973年のオイルショック後、米国がサウジに原油価格の引き上げを認める一方、取引はドルでするよう求めた。そうしてペトロダラー体制が生まれた」

※石油はドルでしか買えない、だからアメリカは強かった いつか人民元の時代が来る?(朝日新聞GLOBE+、2022年7月6日)
https://globe.asahi.com/article/14660719

 さらに柴田氏は、「ペトロダラー体制」のドルの循環について、2018年11月19日付けの『週刊エコノミストオンライン』で、以下のように図解しています。

 「新興国が国際通貨基金(IMF)から巨額のドル建て借金をして、そのドルで石油を買う。サウジアラビアなどOPEC諸国は石油を輸出して得たドルで、米国債を買い、欧米の銀行に預ける」

 その上で柴田氏は、次のように述べています。

 「米国は、71年に金・ドル交換を停止し(ニクソン・ショック)、変動相場制に移行した際、ドルの国際基軸通貨としての地位を維持するために、サウジアラビアに対し原油価格の引き上げを認める一方、あらゆる国が必要とする石油(ペトロ)をドルのみで取引する体制を構築してきた。

 この結果、産油国は多額の石油輸出収入をドルで手に入れることになる。このドル収入が欧米の金融機関を経て米国へと還流し、巨額の貿易赤字など構造的な不均衡を抱えた米国経済を支えてきた」

※「人民元建て」“ペトロダラー”に風穴=柴田明夫 新冷戦とドル・原油・金(柴田明夫、エコノミストonline、2018年11月19日)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20181127/se1/00m/020/053000c

 このドルと石油の循環の恩恵を受けられるのは、米国だけです。

 柴田氏は、ペトロダラーの規模を、原油生産量の直接換算で約1兆6900億ドルとしています。この金額は、12月29日に、バイデン大統領が署名した1.7兆ドル(約225兆円)の歳出法に匹敵します。

 「ペトロダラー体制」のもと、米国の企業は、為替変動リスクにさらされることはなく、ドルを調達するコストも必要ありません。

 他方で中東産油国は、原油収入の為替変動リスクを回避するために、自国通貨をドルと固定し、日本や中国などの原油輸入国は、原油を購入する原資としてドルを保有する必要があります。

 さらに、米国はSWIFT(国際銀行間通信協会)を利用して金融制裁を行うこともできます。SWIFTでは、各国が米国の金融機関に持つドル口座間のドル資金の振り替えによって決済を行っているため、米国が国内法で第三国のドル口座の金融取引を禁止すれば、その国は輸出収入が一切手に入らなくなってしまうからです。

 これに対して中国政府は、すでに2018年には、人民幣建ての原油先物取引をスタートさせています。中国は当時すでに米国を抜いて世界最大の石油消費国となっており、その影響力で「『ドル一辺倒』の原油取引に風穴を開けるという狙い」だと、柴田氏は上述の『エコノミストonline』(2018年)で指摘しています。

 2022年10月28日付けの『ロイター』は、国際決済銀行(BIS)が公表した3年に1度の調査による、世界の外国為替取引について、次のように報じています。なお、為替取引は「ドル/円」「ドル/ユーロ」など相対取引のため、記事の中の通貨の割合は、合計すると200%になることが前提です。

 「通貨別では米ドルが対象の取引が全体の88%を占めた。過去10年間同水準を保っている。ユーロは31%にやや低下したが第2位を維持し、日本円の約17%、ポンドの13%が続いた。人民元のシェアは4%から7%に上昇し、ランキングも8位から5位に浮上した」

※世界の為替取引高が過去最高更新、1日平均7.5兆ドル=BIS(ロイター、2022年10月28日)
https://jp.reuters.com/article/markets-forex-bis-idJPKBN2RN00I

 12月9日に習近平氏が「石油・ガス貿易の人民元建て決済」を表明したことについて、国際情勢解説者の田中宇氏は、12月30日付けの『田中宇の国際ニュース解説』の記事、「中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める」の中で、12月22日付け『ゴールドマネー』の分析記事「インフレ、不況、そして衰退する米国の覇権」を参照して、「習近平とサウジのMbS(ムハンマド・ビン・サルマン)皇太子は、世界経済を根底からひっくり返すような内容の取り決めを結んでいた。それは、サウジがこれまで輸出原油のすべてを米ドル建てで売っていたのをやめて、輸出原油の多くを人民元建てで、中国とその傘下の諸国に売る新体制に移行する話だった」と書いています。

※中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める(田中宇の国際ニュース解説、12月30日)
https://tanakanews.com/221230china.htm

 「ペトロダラー体制」が覆るという情報が事実であれば、大変なことです。ことは、米国の単独覇権を、世界一強力な軍事力とともに支えてきた機軸通貨ドルの強さが根底から揺らぐ、ということです。

 米国単独覇権体制にひたすら従属し、依存し続けてきた日本にとっても重大な事態です。田中宇氏の伝えた情報は、事実なのでしょうか? 検証が必要です。

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(以下、後編に続く)

 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

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IWJ編集部(岩上安身、尾内達也、六反田千恵、中村尚貴)

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