役重善洋様から『近代日本の植民地主義とジェンタイル・シオニズム―内村鑑三・矢内原忠雄・中田重治におけるナショナリズムと世界認識』をご恵贈いただきました。
本書は、日本でシオニズム運動の動向に関心を寄せていた、内村鑑三、矢内原忠雄、中田重治という3人のクリスチャンの思想と行動を、その時代背景との関連において分析しています。日本人クリスチャン知識人によるシオニズム運動への共鳴は、グローバルな帝国主義の中でどのような意味を持ったのでしょうか。占領された側の抵抗の歴史と重ね合わせながら考察しています。
また、ユダヤ人のパレスチナへの帰還をキリスト再臨の予兆と見なす特殊なキリスト的なユダヤ人感は「ユダヤ人帰還論」(Restorationism)と呼ばれてきましたが、ユダヤ人自身によるシオニズム運動が開始されてからは、ジェンタイル・シオニズム(Gentile Zionism)という用語があてはめられたとのこと。ジェンタイルとは、旧約聖書や新約聖書に登場する「非ユダヤ人」を意味する言葉で、「異邦人」と訳されることが多いそうです。本書では、主として論じている時代がイスラエル建国以前であるため、ジェンタイル・シオニズムという用語を用いたと、著者は記しています。
同書の帯には歴史家の板垣雄三氏が、「日本の近代知性の原基と目されてきたものについて、見直しが迫られる。キリスト教が植民地主義・人権主義としてのシオニズムを産出したことが、いま人類に破滅という奈落の底を覗かせているからだ。独特の仕方でナショナリズムの桎梏(しっこく)に繋がれた日本のキリスト教を、他の宗教ともども、パレスチナ・世界の現実と照らし合わすのは、思想史の視座の問い直しに止まらず、世界政治の批判やヒトの未来への思索の基礎作業ともなるだろう」との言葉を寄せています。
著者は現在、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員。パレスチナの平和を考える会事務局長でもあります。
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