「世界」編集部・熊谷伸一郎様から『拉致と日本人』をご恵贈いただきました。
蓮池透・辛淑玉(著)
拉致と日本人
岩波書店 2017/6/28
1978年に北朝鮮に拉致された弟・蓮池薫氏の救出のために声をあげ、政治の不作為を批判する蓮池透氏と、在日朝鮮人として差別へのカウンター活動を続ける市民団体「のりこえねっと」の共同代表である辛淑玉氏の対談書です。
憎悪とナショナリズムにもみくちゃにされながら、国家犯罪の被害者のため、そして差別された者のために声をあげつづける二人が、本書を通して奇跡的な出会いを果たします。
辛氏は「はじめに」の中で、「北への在日差別を口にする議員全員」が「近現代史を知らないのは、朝鮮籍=北朝鮮国籍と認識している議員の多さを見れば明らかだ。植民地宗主国としての自国の歴史すら欠落している」と指摘。そして、そのような風潮に対して「ちょっとおかしいんじゃない?」と声を上げた蓮池氏を、「強い人だな」という驚きと感謝の心を持って受け止めたと辛氏は記しています。
他方、蓮池氏は「あとがき」に寄せて、「安倍首相にとって、朝鮮半島危機はありがたいのではないか。折からの森友学園問題などのスキャンダルが吹っ飛んでしまい、『共謀罪』の必要性を示せるからだ。自分の任期中に拉致問題を解決すると言った安倍首相だが、その任期を恣意的に制度を変えて延長しようとしている。まったく本気度に欠ける、本末転倒な話だ」と直言。また、辛氏との対談を通して「人を愛すること」がいかに重要であることをあらためて痛感したと結んでいます。
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