現代書館の代表取締役である菊地泰博様から『キジムナーkids』をご恵贈いただきました。
本書は沖縄生まれの著者上原正三氏が、少年の視点で描いた沖縄戦の現実を語ったものがたりです。集団自決、米兵による強姦、ひめゆり学徒隊、沖縄大空襲、疎開等々。著者の実体験を通して、戦中戦後を生きた子ども達の飢えと逞しさ、拒絶とあこがれ、そして絶望と希望が本書には綴らえています。
タイトルにある「キジムナー」とは、沖縄諸島周辺で伝承されてきた伝説上の妖怪。一般的にガジュマルの古木に棲んでいるといわれ、沖縄を代表する精霊です。本書の中では次のように紹介されています。
「キジムナーは変幻自在の能力を持ち、入道雲から一寸法師。それからサルやヘビにもなれると。魚に似た姿をしていてもおかしくはない。(略)ボクは見た。会った。(略)ボクの記憶の中にはボクのキジムナーがしっかり棲みついている。ボクは太陽を見上げた。眩しい光輪の中に一瞬キジムナーが浮かび、消えた」
太平洋戦争末期、南部の激戦地では1坪に6発の砲弾が撃ち込まれた計算といいます。「人間や家畜は言うにおよばず、地中のミミズや、さらに深く棲むモグラまでもが焼き尽くされたに違いない」と著者は当時を振り返ります。
腹をすかせて、朝から晩まで食べ物にありつくために東奔西走しなければならなかった裸足の子ども達は、キジムナーに守られ、子どもなりの知恵をしぼりながら、厳しい戦後を生き抜いてゆきます。
文中にウチナーグチ(沖縄方言)が多く登場しますが、逐一その意味がわかりやすく解説されています。沖縄で生まれ育った人々が交わす言語で綴られたこの作品は、沖縄の海や山の情景、そして土や風の匂いまでも感じさせてくれる力を持っています。
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