【声明文#25】安全保障関連法案に反対する奈良女子大学教員有志

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安全保障関連法案に反対する奈良女子大学教員有志の声明

 本年5月に政府によって提案された安全保障関連法案(「平和安全法制整備法案」及び「国際平和支援法案」)は、昨年7月の「集団的自衛権行使容認」の閣議決定を具体化する法案であり、大多数の憲法学者による違憲との見解表明や多くの国民の反対にもかかわらず、衆議院において強行採決されました。その後、法曹界や若者を始めとした国民諸階層の間で反対の声がますます広がっていますが、大学関係者の間でも「安全保障法案に反対する学者の会」のアピールへの賛同署名者(学者・研究者)が13,500人を超え、また100を超える大学で法案に反対するグループが結成されています(8月26日現在)。こうした動きに呼応して私たち奈良女子大学教員有志も法案に反対する意思を表明します。

 この法案の最大の問題点は、日本が他国から攻撃を受けていない場合でも、「存立危機事態」と判断された場合には自衛隊による「武力の行使」を認めていることです。「存立危機事態」とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義されています(自衛隊法76条改正案)。定義の後段で一定の制約が課せられてはいますが、いずれにせよ日本が他国の戦争に参戦できる規定であることに違いはありません。これは明らかに憲法9条第1項(「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」)に違反します。国会がこの憲法違反の法案を成立させることは国政の基本原理たる立憲主義を否定する行為と言わざるを得ません。

 私たちは日本が他国の戦争に加わり、日本国民が他国の国民を殺し、あるいは殺されるという事態が生じることを容認できません。私たちは国会が憲法を遵守し本法案を廃案とすることを強く求めます。

2015年9月4日

奈良女子大学教員有志(五十音順、※は名誉教授)
麻生 武※・浅田晴久・天ヶ瀬正博・安藤香織・石坂友司・磯田則生※・井上洋一・上江洌達也・上野邦一※・大石 正※・小川伸彦・小川英巳・河上麻由子・狐崎 創・木村 優※・功刀俊雄・久保博子・栗岡幹英・小城勝相※・佐藤宗諄※・佐藤宏明・鈴木康史・鈴木則子・鈴木広光・瀬渡章子・高岡尚子・髙木由臣※・髙田将志・竹本憲昭・舘野和己・千田春彦・中塚 明※・中山 徹・新出尚之・西出良郎・西村一朗※・西村拓生・西谷地晴美・野村鮎子・藤井康之・藤原 昇※・松岡悦子・三成美保・三野博司※・本山方子・安田恵子・柳澤有吾・山崎明子・山本徳郎※・遊佐陽一・吉川仁子・吉村あき子・和田恵次(他、氏名の公表を控える者5名)
 
※安保法制に反対する団体の声明文はこちら