【声明文#18】安全保障関連法案に反対する一橋大学有志の会

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 一橋大学では、衆議院での強行採決を受け、7月26日に教員有志による声明文を公表しました。8月末までに、教職員・学部生・院生・卒業生のみなさんから賛同が634名、3団体から集まっています。

 「安全保障関連法案に反対する学者の会」と連携しながら抗議行動を行い、12万人が国会前に集結した歴史的集会にも「一橋有志の会」の多くのメンバーが参加しました。

 以下が「安全保障関連法案に反対する一橋大学有志の会」の声明文です。


安全保障関連法案に反対する一橋大学有志の声明

 日本の敗戦から70年目にあたる今年は、あらためて、民主主義の重要性を確認するとともに、侵略戦争と植民地主義の歴史を省察し、アジア平和外交と人権が尊重される社会を築く責任を深く自覚し、それを果たすために尽力すべき大切な年だといえます。しかし、現実の政治は、おなじ「平和」という言葉を用いながらも、本来あるべきその姿とは逆行しています。その最たるものが、安倍内閣が閣議決定し、今国会に提出した「国際平和支援法」「平和安全法制整備法」の安全保障関連法案です。

 安全保障関連法案は、従来の政府解釈においても、日本国憲法第9条に照らして違憲とされてきた、集団的自衛権の行使を認め、自衛隊による海外での武力行使へと途をひらくものです。武力は、これまでも多く「平和」を旗標に行使されてきましたが、絶えざる紛争や報復の連鎖は、武力行使が真の平和をもたらす手段たり得ないことを物語っています。武力行使は、それがたとえ「平和」を掲げるものであっても、決して容認されるべきではありません。

 かかる陥穽は、それを見抜いた専門家や地方議会や市民などによって指摘され、警鐘が鳴らされてきました。そして、多くの人びとのあいだに法案に対する不信や反対の声が高まり、安倍首相自身が「国民の理解が進んでいない」と認めざるを得ない情況となりました。しかしながら、国会で与党が多数を占めていることを背景に、強引に審議が進められ、衆議院において強行採決がおこなわれたのです。こうした手法は、民主主義の根幹を揺るがすものとして、断じて看過できません。

 また、昨今国立大学法人をはじめとした日本の大学で進みつつある、人文・社会科学の整理・縮小や、日の丸・君が代の取り扱いをめぐる「適切」な判断の要請といった、大学における学問研究の自由や、自治を脅かす施策は、民主主義の危機という意味で、安全保障関連法案とも通底します。

 顧みれば、アジア太平洋戦争下に東京商科大学として存在していた一橋大学は、文科系学生の徴兵猶予の撤廃にともなって多くの学生を戦地に送りだしたのみならず、文科系大学を整理する施策のもと、工業経営専門部の設置や東京産業大学への改称といったかたちで、戦時体制に組みこまれていった歴史をもっています。一橋大学のみならず、戦時下に多かれ少なかれ戦争遂行に加担した大学や学問研究は、戦後、それに対する反省を踏まえて再出発しました。こうした大学や学問研究の歩みを、今こそ想起すべきです。

 以上のように、安倍政権が目指す方向性は、立憲主義・平和主義・民主主義、そしてそれらと密接に関わる大学や学問研究の歩みを根底から覆すものに他なりません。

 私たち一橋大学関係の有志一同は、ここに、安全保障関連法案に強く反対する意思を表明します。

2015年7月26日

呼びかけ人(各研究科50音順)
商学研究科:越智博美、河野真太郎、佐藤郁哉、米倉誠一郎
経済学研究科:石倉雅男、高柳友彦、寺西俊一、福田泰雄、山下英俊
法学研究科:阪口正二郎、只野雅人、長塚真琴、森千香子
社会学研究科:秋山晋吾、石居人也、伊藤るり、大河内泰樹、加藤圭木、貴堂嘉之、木村元、木本喜美子、坂元ひろ子、佐藤仁史、平子友長、高須裕彦、中野聡、中野知律、阪西紀子、森村敏己、山田哲也、吉田裕、若尾政希、渡辺尚志
言語社会研究科:井上間従文、鵜飼哲、小岩信治、中井亜佐子、中山徹
院生:院生自治会有志

 
※安保法制に反対する団体の声明文はこちら