【声明文#8】安保法制に反対する筑波大学有志の会

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 以下の声明は、「安保法制に反対する筑波大学有志の会」が筑波大学で2015年8月4日に開催した「安保法制について考える討論集会」での議論をもとにして作成しました。本声明、「討論集会」における議論の記録は、以下のサイトにおいて公開されているので、併せてご覧頂ければ幸いです。


 私たちは、安倍内閣が本国会に提出した安全保障関連法案に、以下の四つの理由から反対します。

 第一に、本法案が成立し、施行されれば、立憲民主主義の中心的理念が破壊されてしまいます。本法案は、昨年度に安倍内閣が行った、集団的自衛権容認に関する閣議決定に基づいて法制化されたものです。しかし、そもそも閣議決定によって憲法九条を無効なものとするという行為は、日本国の最高法規である憲法を、執行権力である内閣が蹂躙するという矛盾した行為であり、立憲民主主義の観点から到底容認できないものです。またこの法案は、集団的自衛権の行使を可能とする武力攻撃事態法改正案など計十法案の一括改正に加え、海外で他国軍を後方支援する国際平和支援法(恒久法)案からなっており、厳密な立法論議を困難にする構成になっています。このような法案が法制化されれば、近代世界の基本原理である立憲民主主義というシステムが意味を失ってしまうおそれがあります。

 第二に、本法案は、集団的自衛権の行使を容認するものであり、明確に憲法に違反した法案です。このような法律が成立し、施行されれば、日本国憲法の平和主義は完全に意味を失ってしまい、憲法の基本理念が破壊されてしまいます。憲法の理念にそぐわない法案を、私たちは決して容認することはできません。

 第三に、本法案が成立し、施行されれば、日本の自衛隊は、集団的自衛権や集団的安全保障という名の下に、他国の世界戦略に基づいて世界各地で戦争に協力する存在になる可能性があります。自衛隊が他国の世界戦略に協力するための組織になれば、それは他国の単なる「軍隊」と同じ組織になってしまいます。しかし、自衛隊を他国と同じような単なる「軍隊」にすることは、憲法第九条に照らせば決して容認できない事態です。

 第四に、現内閣は「安全保障環境の悪化」を本法案提出の理由としていますが、私たちはそのような「安全保障環境の悪化」という認識そのものに疑問を持っています。日本は、中国を始め自国を取り巻くアジア諸国と戦争をする状況にはなく、また戦争をすべきでもありません。そうした状況にない以上、日本はアジア諸国と外交的手段によって関係を改善するべきです。また、安全保障環境を現在以上に安定させるためには、日米安保体制に偏らないアジア全体の協力関係、さらにはアジア共同体のような平和維持機構を構築していく努力が重要だと、私たちは考えています。

 大学とは、知的な手段を通じて新たな世代を育成し、理念によって事実を批判することを目的とした機関であり、そのような機関に教職員、学生として属し、あるいは過去に属していた私たちは、日本の未来に安全保障の面からも立憲民主主義の面からも確実に暗雲をもたらす本法案の成立に反対します。また、法案に反対する私たち自身、今後も、自分たちなりの仕方で平和への不断の努力を行っていく所存です。

 私たちは安倍内閣が、日本の立憲民主主義体制を護持すると同時に、実質的に日本をこれまで以上に戦争のリスクに曝すことになる「積極的平和主義」というごまかしの理念に依拠することなく、日本国憲法の平和主義を厳密な意味で遵守することを求めます。

戦後70年を迎える2015年8月15日
安保法制に反対する筑波大学有志の会

発起人:
相澤啓一、五十嵐沙千子、井川義次、小川美登里、木村周平、佐藤千登勢、佐藤嘉幸、清水知子、高木智世、津崎良典、前川啓治、宮崎和夫、本澤巳代子、吉原ゆかり(以上、人文社会系、50音順)、教員有志、SEALDs/筑波大学生・大学院生有志、人文社会科学研究科大学院生有志
 
※安保法制に反対する団体の声明文はこちら