長く続いた鎖国から外圧によって開国した日本は、国際社会に近代国家として認めてもらい、不平等条約の改正など、欧米先進国(当時の帝国主義国)の仲間入りを果たすため、法治国家となるべく明治憲法をはじめとする諸法典を制定した。明治憲法は国際社会を意識して策定されたため、昔の風俗習慣は極力排除されている。施行後57年間改正されることはなく、戦後憲法改正手続きを経て、日本国憲法が誕生した。
敗戦という国家存亡の危機を踏まえての憲法改正であり、新憲法は旧憲法にも増して国際社会を意識したものとなった。旧憲法から引き継いだ立憲主義に加え、先進国標準の基本的人権の徹底、そして戦争放棄による平和主義という全く新しい原則を掲げて、旧憲法を超える期間にわたって存続してきた。
転変する時局と一時的な気分に基づいて、国際社会への影響や憲法学者の通説すら無視して、貴重な国の資源を投入して憲法改正を進めることは歴史的に大きな禍根を残すことが明白である。