今回の法律(安保法制)が、日本が戦争に参加する敷居をこれまでよりも低くすることは確かで、国家の論理からすれば「安全保障上」という論理は絶対なのでしょうが、グローバリゼーションと国際移動を専門とする研究者の立場からは、この法律が時代にまったくそぐわないものであり、反対します。
国境を越えた人の移動を国家が規制することができないのは歴史が明らかにしていることであり、外国人や外国にルーツのある人が日本において今よりも増えることがあっても減ることはありえません。そうした社会において、今回の法律は、外国にルーツのある人たちを「敵」と想定してしまうもので、外国にルーツのある人たちば、すでに家族、恋人、友だち、同僚、地域社会の隣人として身近にいる現実と相容れるものではありません。
(稲葉奈々子 上智大学教授)