【安保法案反対 特別寄稿 Vol.314】 安倍フランケンシュタインの過ちが、戦争という「怪物」を産み出す 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 京都大学教授(英文学)廣野由美子さん

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 英国作家メアリ・シェリーの小説『フランケンシュタイン』において、科学者フランケンシュタイン博士は、人類に恩恵をもたらすという理想に燃えて、死体を寄せ集めて人造人間を造り、怪物を世に放ってしまいます。

 このところ権力者としてどんどん活性化してきた安倍晋三総理もまた、亡き祖父(岸元総理)の栄光を引き継ぎ、強い軍国主義の国を蘇らせ、日本を救う英雄になりたいという「死体」のような切れ切れの思いを寄せ集め、自分が正しいのだという妄想に駆られて、平和憲法をずたずたにし、日本に再び戦争という「怪物」を産み出そうとしています。

 人造人間が出来上がるその日まで、周囲の世界から自らを遮断し、誰の声にも耳を傾けようとしなかったフランケンシュタイン博士は、怪物による殺戮の歯止めがきかなくなったとき、自分の犯した取り返しのつかない過ちに気づくのです。

 安倍総理もまた、いかに学生たちや一般市民が大規模な反対デモを繰り広げようが、各分野の専門家が異論を唱えようが、先輩政治家たちがたしなめようが、安保法案が通過するその日まではいっさい無視するような人物であると、わかりました。安倍氏は日本のために自分はよかれと思っているのだ、と高を括っているのでしょうが、日本人がテロの標的になったり、自衛隊員が戦場で悲惨な体験をしたり、日本が殺し殺される国になったりする日が来てから、彼の過ちが証明されても、遅すぎるのです。

 自民・公明政府は、方法を選ばず、何が何でも法案を通過させようとしています。主権をもつ国民の多数がいかに反対しても、どんな正論を突き付けて誤りを正そうとしても、もはや狂気に達した政治家たちを変えることはできません。猶予の残されていない今となっては、何としても法案を通過させないための具体的な策を練るべく、智恵を結集すべき緊急時ではないでしょうか。

 たとえば、現職者が一国の総理大臣をつとめるための資格を欠いた病理的精神状態にあることなどが、もし専門的見地から証明されるというようなことがあれば、即刻退陣を免れないでしょう。本来は、与党議員のなかから、多数の国民の反対意見に耳を傾けるべきだという良識ある声が出てきても当然なのに、恐怖によって縛られているのか、あるいは洗脳されているのか、言うべきことも言わず誰もが黙従しているという、何とも情けない状況です。まずは彼らに、独裁の縛りから解き放たれて目を覚まし、党を超えて本来の政治家としての任務を果たしてもらいたいものです。

 しかし、戦後70年の間に平和ぼけしてしまい、目先の利益に釣られて選挙で自民党を圧勝させ、独裁者という「怪物」を産み出してしまったこと、そして、「国民は馬鹿だから何とでもなる」と思わせるまでに彼を暴走させたことの責任が、国民自身にあるということを、私たちは忘れてはならないと思います。

廣野由美子 京都大学教授(英文学)

 
安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ