今回の安保関連法案は、産・官・学・軍の悪しき「連携」を生み出しかねない暴挙であると考えます。
新産業のイノヴェーションが経済界から声高に叫ばれ、「地方創生」の名のもとで中央が地方を飼い慣らし、地域貢献・国際交流・イノベーションという言葉で粉飾されつつある大学知が、国からの補助金削減の圧力を受けながら、基礎研究の名のもとで軍需産業に手を染めはじめる、という事態が生じないとは言い切れないと思っています。軍事研究に関する研究経費の交付案や、学生を対象とした防衛省へのインターンシップ、自衛隊予備役をもつ企業を優遇する政策案などが浮上しつつあると見聞きします。まさしく「軍事動員」、「経済的」徴兵制の足音が聞こえてる状況にあると思われます。
一方で、沖縄という「地域」の声 ―辺野古新基地反対― が、安保法案反対という世論の高まりにつながっていく、広がっていく雰囲気を、沖縄の地で肌で感じています。「地域の声が、社会を動かす」ということこそ、そこに生活する人々が主体的に生きていくための原動力となるはずです。
かつて西洋史家の上原專祿は、1960年代に「地域の『地方』化を阻止しなければならない 」と強く主張していました。上原にとっての「地方」とは、「中央」に対置される概念であり、支配―従属の構造をそこに見出します。他方で、「地域」とは、「単に地理的な概念ではなく、生活の実際基盤に密着して形成された地縁的な社会集団」と定義します。上原は「東京―県」、「アメリカ―日本」の関係を「支配―従属」を前提とした「地域の『地方化』」という概念で捉え、「地域」が主体性を確保していくことの重要性を訴えるのです。
この安保関連法案は、まさしく「地域」を「地方化」させ、我々の声 ―社会を動かす力― を押さえつけるものにほかなりません。今年の8月30日に展開された安保法案反対デモ・集会は、国会周辺だけではなく各地域が主体的に声を上げたものです 。その地域の力を、これからも政府に対して見せつけていき、産・官・学・軍の悪しき「連携」を断ち切っていきたいと思います。
池上大祐(琉球大学法文学部教員・西洋史学)