民主政治の基本は、「言葉」というものに誠実であることを前提とする。
「言葉」とは、公的な発言、国会での質疑応答であり、そして法律も「言葉」である。しかしながら、安倍政権は「言葉」への誠実さが微塵もないだけでなく、「言葉」を愚弄している。
安倍政権は「積極的平和主義」を掲げ、それを安保法制制定の根拠にしている。「積極的平和」という言葉は、もとはノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングが提唱したもので、ただ戦争のない状態を「消極的平和」として、戦争の原因となる貧困、抑圧、差別などの「構造的暴力」のない状態を「積極的平和」と呼んだことに由来する。これに対し安倍政権は、アメリカと一緒になって、アメリカの下請けとして積極的に戦争に参加していくことを「積極的平和主義」と呼んでいる。
「言葉」を愚弄する安倍政権には、憲法を守る気がない。それゆえ、ほとんどの憲法学者が違憲だと言っているにもかかわらず、安保法制を強行採決できるのだ。
「言葉」を愚弄する者は、民主主義を愚弄する者である。民主主義を愚弄する者は、国民の生命と財産を軽んじる者である。それゆえ「国民の生命と財産を守るため」と言いながら戦争を厭わないのだ。
民主主義を愚弄し、国民の生命と財産に手をつける者を決して許すわけにはいかない。
「安保関連法案に反対する被災三県大学教員有志の会」記者会見(2015.7.31)より
上村静(尚絅学院大学准教授)
(編集部注)
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