【声明文#21】安全保障関連法案強行採決に抗議し、同法案の廃案を求める上智大学教職員有志

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 私は、大学時代に日本史を学んだ後、国際協力の現場で働き、現在は、ジェンダー論や市民運動について教えています。

 「軍事的抑止力によって平和を実現するのは消極的平和(Negative Peace)。紛争要因となる格差や不平等など構造的暴力のない状態を実現するのが積極的平和(Positive Peace)であり、国際協力の役割は後者にある」と教えてきました。第二次安倍政権が発足以来、掲げている「積極的平和主義(Proactive Contribution to Peace)」は、混乱を招く概念です。

 今年2月には、「国益の確保」を強調した「開発協力大綱」が閣議決定され、「国際平和支援法」という名で他国軍支援を可能にする法案も衆議院で可決されています。「平和」というキーワードを用いながら、本来の意味とは異なる意図をもつ政策が、日本で浸透していくことを恐ろしく感じます。

 この方針の転換は、日本のメディアが取り上げている紛争地域以外からも反発を招くことは想像に難くありません。非軍事で日本ができること、やるべきことはまだたくさんあります。

 日本軍による戦時性暴力の問題や女性政策など、安倍政権が推し進める政策は、問題を直視せず、根本的な解決に至らないものばかりです。

 私の授業では、世界の力強い市民運動を題材に「政府を正すのは市民の役割である」ことも伝えています。今こそ自分が日本で実践しなければという使命感をもって、安保法案の廃案はもちろん、安倍政権の退陣を求める運動に関わり続けます。

 なお、7月31日に上智大学の教職員有志で下記の声明を出し、卒業生・在校生・現/元教職員の方から賛同を募っているところです。
(田中雅子 上智大学 総合グローバル学部 准教授)


安全保障関連法案強行採決に抗議し、同法案の廃案を求める上智大学教職員有志による声明

 2015年7月16日、安倍晋三内閣は衆議院本会議において合計11の法案をまとめた安全保障関連法案を強行採決し、可決しました。同法案については、大部分の憲法学者をはじめ、多くの国民が憲法違反であるとし、また、同法案可決に反対する声が日に日に高まっています。そうした中での強行採決は、立憲政治の根幹を揺るがし、日本における民主主義の存続を危うくする暴挙と言わざるを得ません。

 私たちの上智大学は、キリスト教精神を基底とし、真実と価値を求めて、人間形成につとめることを教育理念の中心に据えています。人格の尊厳と基本的人権の尊重を脅かす戦争への参加を違憲立法で可能にしてしまうことは、「人を望ましい人間へと高める最上の叡智」(Sophia)を追究する本学の使命とおよそ相容れるものではありません。

 満州事変から軍靴の響きが日本国内でも日増しに強まっていた1932年春、カトリック信者の学生数名が軍事教練での靖国神社の参拝を拒否したとして軍部が配属将校を引き上げ、上智大学が存亡の危機に立たされるということがありました。信教の自由、学問の自由への弾圧が強化されるなか、上智大学もまた学生を戦場に送っていくことになりました。

 我々、上智大学教職員有志は、「上智の精神」を胸に立憲主義と民主主義の擁護を求める全てのソフィアンとともに、この強行採決に抗議し、同法案を廃案に持ち込むことを要求します。

 
※安保法制に反対する団体の声明文はこちら