【安保法案反対 特別寄稿 Vol.282】 安保関連法案を廃案に 首相は独裁政治を行う気か 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 秋田県立大学教授・谷口吉光さん

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 安保関連法案が国論を二分する大問題になっている。秋田でも大きな議論になっている。

 とはいえ、「二分」といっても、国民の意見が賛成と反対に二分されているのではない。国民の過半数はこの法案に反対している。最近の世論調査によると、「反対」57%が「賛成」29%を大きく上回っているし、「今国会で成立させる必要はあるか」という質問に対しても、「必要はない」69%、「必要がある」20%という結果になっている(朝日新聞7月20日)。

 しかし、衆参両院で多数を占める与党は何としてもこの法案を成立させようと躍起になっている。「二分」しているのは国民の意見と政権の意見なのだ。

 しかも、この法案に対しては、憲法学者の大半が「憲法違反だ」と判断している。朝日新聞の調査に回答した憲法学者122人のうち、法案が「憲法違反」と答えた人は104人、「憲法違反の疑いがある」が15人、「憲法違反には当たらない」はわずか2人だったという(7月11日)。それにもかかわらず安倍政権はこの法案を「合憲だ」と言い張って譲らない。

 異常な、不気味な光景である。なぜ安倍政権は、安保関連法案成立にこれほどまでに執着するのかという疑問がまず浮かぶが、もっと不気味なのは、安倍政権が公然と日本国憲法を無視するかのような行動を取っていることである。本欄ではこの点に絞って私見を述べる。

 大部分の憲法学者が「違憲だ」と言っている法案を時の政権が「合憲だ」と言ってそれが通るなら、日本はもはや法治国家とは言えない。そういう権力者を「独裁者」といい、そういう政治は民主政治ではなく「独裁政治」という。6月に「安全保障関連法案に反対する学者の会」が結成された。私も署名したが、この会の代表が7月20日都内で記者会見し、次の抗議声明を出している。

 「安全保障関連法案に反対が多数となり、8割を超える大多数が今国会での成立は不必要としていた状況の中での強行採決は、主権者としての国民の意思を踏みにじる立憲主義と民主主義の破壊です。首相自身が法案に対する『国民の理解が進んでいない』ことを認めた直後の委員会採決強行は、現政権が国民世論を無視した独裁政治であることを明確に示しています」。

 「独裁政治」という言葉が唐突に聞こえたかもしれないが、上で述べたように、現政権の振る舞いを説明するのに的確な言葉だ。安倍政権は安保関連法案をテコに日本の民主主義を破壊し、独裁政治を始めようとしているのではないか。この疑念は学者だけでなく、国民の中に急速に広まっているように思う。

 ここまでこじれた安保関連法案は潔く廃案にして、憲法の許す範囲内の法案を再提出するのが賢明だ。

※朝日新聞秋田版「秋田を語ろう」2015年8月5日付を加筆・修正しました

(谷口吉光 秋田県立大学教授)

安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ