安保法制が成立したら、次にやって来るのは「言論統制」である。
なぜなら、「いざ戦争」となったら国論は必ず賛成派と反対派に二分されるため、戦争を始めようとすれば、政府はなんとしても反対派を抑え込まなければならないからである。そのためにはマスコミ報道のコントロールと国民への言論抑圧がどうしても必要になる。
実際、小泉政権が「自衛隊のイラク派遣」を決定しようとしただけでも、「読売新聞」は賛成、「朝日新聞」は反対を唱えるなど国論は二分された。
その際、「派遣反対のビラ」をマンションのメールボックスに入れて回っただけで、警察はその人たちを「住居侵入罪」で逮捕し、長期間拘留した。「言論抑圧」なしに戦争などできないことは、この一事からも明らかである。
安保法制を押し通そうとしている自民党の憲法草案には、「表現の自由」の条項に、現憲法にはない「第二項」が設けられている。
「第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。2 前項の規定にもかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」(自民党憲法草案、同党ホームページより)
「公の秩序を害する」かどうかを判断するのは誰なのか。このことを少しでも考えてみれば、これがいかに危険な条項であるかは誰の目にも明らかである。今日大きな広がりを見せている安保法制反対の意思表示は、基本的人権を守ろうとする「国民の声」にほかならない。それに賛同しない学者がいるとすれば、そのことの方が不思議である。
山口義行 立教大学経済学部教授(金融論)