【安保法案反対 特別寄稿 Vol.270】 日本が武力行使することによって痛手をこうむるのは「他国」ではなく「他国民」である 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 新潟大学准教授・酒匂宏樹さん

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 私たちはこの夏、社会の行く末について真剣に考える機会を得ることができました。

 私が高齢者になったころ、「21世紀の初めごろは自衛権がどうだ、経済成長がどうだと騒いでいたが、日本列島の自然は豊かではないか。何をあたふたしていたのだろう」と振り返る日が来ると思っています。そういう日がなるべくなら早いうちに来てほしいものです。

 万が一、戦争が起きてしまったら、自然も破壊されてしまいます。本当に守るべきものはなんなのかを私たちはもう気づいています。そこから目を離さないようにしたいものです。

 政府がいうところの「自衛権」の正体は何でしょうか。一体、何から何を守ろうとしているのか、きちんと整理しないといけません。「日本を他国から守る」といいますが、そこにいびつな擬人化が働いていることを見逃すわけにはいきません。日本が武力行使することによって痛手をこうむるのは「他国」ではなく「他国民」である。この当たり前の事実こそが重要だと思うのです。

 法案が廃案になっても安心せず、法案が成立しても落胆せず、諸国民が同じ立場に立つための方法をみなさんと一緒に考えていければ嬉しいです。

(酒匂宏樹・新潟大学准教授)

安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ