【安保法案反対 特別寄稿 Vol.260】 誰のための政治ですか? 何のための安保法案ですか? 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 九州大学教員・小川玲子さん

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安倍さん

 あなたがこの安保法案を通じて「取り戻したい」日本がどんな姿になるのかを想像してみましょう。憲法違反の安保法制が国会で採択されるのであれば、立憲主義は否定され、法の支配など誰も信じなくなるでしょう。権力者が力に任せてルールを変更できるのであれば、私たちは民主主義ではなく、権力にこびへつらうことを学ぶでしょう。

 外部に敵を作りだし、武力による威嚇を続けるのであれば、東アジア地域の平和も友好も豊かさも破壊され、取り返しのつかない禍根と多くの犠牲者を生みだすことでしょう。アメリカに追随して集団的自衛権を行使すれば、不本意な戦争にも巻き込まれ、テロのターゲットとなるリスクは高まり、自衛隊員を含めて私たちの命が危険にさらされるでしょう。アメリカの基地が拡大すれば、沖縄と本土との亀裂はもはや埋められないほど深くなり、環境は破壊され、沖縄の人々の安全な暮らしはさらに脅かされるでしょう。アメリカから高額な武器を購入しつづければ、借金はますます膨張し、社会保障費の削減によって貧困は拡大し、子どもの学力は低下し、介護難民は増大するでしょう。

 現在、日本には200カ国近い外国人が暮らしていますが、交戦相手国となった「敵国民」は収容所に入れられるか、ヘイトスピーチに煽られて関東大震災の時のように殺されてしまうでしょう。そして、自由も人権も保障されない危険な国には住みたくないと考え、外国人や若い人たちは海外へと流出するでしょう。

 誰のための政治ですか?

 何のための安保法案ですか?

 あなたが「取り戻したい」日本、あなたが「美しい」と思う日本を私は共有しません。戦後の日本は過去の歴史に学ぶことを避け、アジアの隣人たちと向き合うことを避け、ごまかしの中での繁栄を続けてきました。もうごまかしはやめましょう。

 武力による威嚇ではなく対話と信頼による平和を、権力者の暴走ではなく立憲主義を、力による支配ではなく話し合いによる民主主義を、歴史のごまかしではなく歴史と向き合い学ぶ勇気を、反対意見を圧殺するのではなく共に新しいものを創造していく知恵を、社会的弱者の切り捨てではなく多様な人々が安心して暮らせる社会を。

 私はあなたからそんな社会を「取り戻したい」。

 私たちの過去と未来を「取り戻したい」。

(九州大学教員 小川玲子)

安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ