【安保法案反対 特別寄稿 Vol.255】 民主主義に流れる時間の再構築を 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 西南学院大学法学部准教授・鵜飼健史さん

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 安全保障関連法案が成立しようとする現状は、まさに民主主義の全般的な危機です。

 内容の面では、周知の通りの憲法違反があり、基本的なルールとしての立憲主義が侵されています。手続きの面でも、選挙での多数者による強権的な支配が、民衆の自己統治としての民主主義の看板を強奪している状況です。これは同時に、民主主義の理念の面に対する破壊的な試みです。私たちの同意なく、よその国に政策実現を約束することなど、民主主義において許される行為なのでしょうか。これらの症例は、安保法案に賛成するか反対するかという、私たちの政策的な選好以前の問題です。

 さらに安保法案は民主主義を構築してきた、そして、それによって涵養されてきた人類の知に対する否定的な挑戦です。同法案が求めるものは自衛隊のアメリカ軍とのより緊密な一体化であり、その地球規模での展開です。その結果、当然血も流れるでしょうし、テロの可能性を含め社会的秩序を決定的に不安定化させます。中国、ましてや韓国に対する牽制と理解するような、(自民党政府にとって)良心的な方々は、いまいちど政治情勢によく目を凝らしてみてください。中国政府の反応は至極真っ当で、「日本の防衛戦略の変化」と理解しています。そもそも、簡単に解釈改憲するような政府の言葉を信用できるのでしょうか。権力によって次に抑圧されるのは、良心的な方々かもしれません。他国の民主主義の程度に敏感な感覚をもっているならば、現行の日本政府がそちらの方向に同化して行く流れを拒絶するはずです。まさに民衆の政治的判断力が必要となる局面です。

 安保法案をめぐる政権党による民主主義の攻撃は、新たな展開を見せています。それは時間を盾にして、国会会期延長に伴う、審議時間の長さを理由にした法案の採決です。いまや、十分な審議という民主主義の条件をも、全く空疎な時間の消化よって置き換えようとしています。この時間は強行採決への助走にすぎません。これに対抗して、私たちは民主主義に流れる時間を再構築しなければなりません。

(鵜飼健史 西南学院大学法学部准教授)

安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ