私はこれまで大学の英語教育を通して、日本語以外で情報を得ることの大切さを伝えてきたつもりです。
つねに情報源を複数持ち、多角的視野のもと、自分で考えることのできる人間になってほしいとの思いを常に持ちながら、教壇に立ってきました。2012年に、私はひとりのアメリカ人青年に出会いました。
彼の名はアーロン。
2003年イラク戦争開戦の時、彼はデザインを専攻する大学生でした。しかし、州兵として登録していた彼は、米軍からの突然の電話で、イラクに派兵されることとなりました。最初は、「イラクの人を独裁者から救うんだ」と自分の任務を誇りに思ったそうです。
しかし、派兵されていた1年余りの間、 彼や仲間の兵士たちが命令されたことは、 イラクの人々を救うどころか、 イラクの子どもたちに銃を向け、 人々を侮辱し、抑圧することだけ・・・
任務が終了し、イラクの国境を越えた瞬間、 罪の意識に泣き崩れたそうです。
今、私が大学で教えている若者たちに将来、アーロンのような苦しい思いをさせてしまったら・・・。
イラクやアフガニスタンの人々だけでなく、アーロンを始め、多くのアメリカの若者をも苦しめる、14年にもおよぶ「対テロ戦争」。「集団的自衛権」という名の下に、この戦争に荷担し、日本の若者を同じように苦しめ、日本社会を巻き込むことを可能にする「安全保障関連法案」に、私は強く反対します。
(神戸大学非常勤講師 小橋薫)