【安保法制反対 特別寄稿 Vol.221】 戦(いくさ)の文学と「戦争法案」 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 ノートルダム清心女子大学・原豊二さん

このエントリーをはてなブックマークに追加

 文学研究の対象として口承の文芸というのがあります。「昔話」などがそれに該当します。普通の口承文芸は、長くても百年程でほぼ失われるようです。しかし、戦(いくさ)の記憶はこれらの平均寿命よりも倍以上の命脈を保つということです。それだけ、戦(いくさ)の悲劇は一般庶民にとって忘れられないものなのです。

 昨年、戦死した祖父の七十回忌に出席しました。多くの親類が集まりました。七十年経った今でも、先の大戦について多くのことが語られるのは、戦(いくさ)の記憶のあり方からして、むしろ当然のことなのだと思います。

 一方で、人の死を美学化する文学作品があるのも事実です。特に戦死者に対して美学化が行われます。すべての詳細な経緯を捨象し、思考停止を求める戦死者の「英霊」化には特に注意が必要です。私の祖父はどうやら餓死であったようですが、この死の原因は軍部の戦略ミスにほかなりません。「英霊」化とは、権力側による責任逃れの一手法でしかありません。

 さて、私は多くの戦死者が出るであろう安倍政権の「戦争法案」に強く反対します。彼の言う欺瞞に満ちた言説を検証し、本当の言葉で「平和」を考えていきましょう。

ノートルダム清心女子大学文学部 日本語日本文学科 准教授
原豊二

安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ