【安保法制反対 特別寄稿 Vol.165】 安全保障関連法案の採決に反対する声明 NGO非戦ネット

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 日本政府(安倍政権)は、多くの市民の懸念や疑問、反対にも関わらず、現在衆議院特別委員会で審議されている、「平和安全法制整備法案」と「国際平和支援法案」からなる安全保障関連法案(以下、安保法案)の採決を強行しようとしています。

 私たちNGO非戦ネットは、安保法案と、この法案を中心に日本を戦争ができる国にしようとする動きに危機感を抱いた国際協力NGOとして、安保法案の採決強行に強く反対し、この法案の廃案を求めます。

1.武力は平和を決して生み出さない。

 私たちは、世界各地で、紛争や貧困など危機に晒された人々とともに活動するなかで、一回の軍事行動、一発の砲弾が、人々の平和とよりよき未来に向けた地道で大切な営みをすべて台無しにし、信頼と希望が恐怖や憎しみ、絶望、そして報復へと変わってしまう過程を目の当たりにしてきました。そして、戦争が最も破壊的で大規模な人権侵害と環境破壊を人々にもたらしてきたことを心に刻まなければなりません。

 9.11以降今日に至る世界の状況は、武力によって平和は生み出せないということを改めて示しています。だからこそ、私たちは、地道で時間がかかっても、平和を生み出すために、対立を対話に変える努力を積み重ねていくべきだということを学んできました。

2.日本国憲法は、日本の国際協力・平和貢献の原点

 私たち国際協力NGOは、第二次世界大戦の反省にたって獲得した日本国憲法が、前文において「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」し、第9条で「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とし、全世界の人々の平和的生存権を非軍事的な手段によって達成すると宣言したことに誇りをもってきました。そしてこの憲法の精神をこころに留めながら、貧困、差別、人権侵害などを除去するために活動してきました。この平和憲法と非戦の思想は日本が世界の平和に貢献する比類ない資源かつ財産であり、日本から世界に向けた国際協力・平和貢献の原点です。こうした日本の非軍事の姿勢に基づく地道な活動は、国際社会、特に世界各地の市民社会から高く評価され、現実に平和を生み出す役割も果たしてきました。

3.平和国家としての積み重ねを否定する安保法案

 ところが、現在国会で審議されている安保法案は、日本がこれまで積み重ねてきた平和への営みを180度転換し、日本を戦争ができる国にしようとするものです。法案に基づき、集団的自衛権の行使が容認されれば、日本は海外での武力行使に直接参加することが出来るようになり、また、弾薬の供与など武力行使と一体化した「後方支援」が拡大されることになります。

 海外の戦争に積極的に参加し、武力紛争・殺戮の当事者になることに道が開かれます。

 これは、日本国憲法が採用した恒久平和主義を踏みにじるものであり、私たちは到底容認することはできません。

 世界の人びとの苦境を創り出している根本原因のひとつが戦争であることは明らかです。第9条を持つ国として、世界で多発する戦争を根絶する側に立つべき日本が、紛争に加担し、殺戮の当事者になることを私たちは決して容認することはできません。

4.地球規模の紛争で殺戮と破壊、人権侵害の当事者になる

 私達は、日本が集団的自衛権の行使や、戦争の「後方支援「の名の下に、同盟国と共に、中東・アジア・アフリカなど世界のあらゆる地域で戦争に加担することを懸念します。

 内閣は集団的自衛権の行使について、いわゆる新3要件を提示していますが、いずれも曖昧であり、その条件に該当するかを判断するのは時の政府です。

 また、ひとたび戦場に身をおけば、交戦を避けることは著しく困難であり、武力行使に加担すれば、国際人道法などのルールは無視されます。子どもや女性を含めた住民が戦闘に巻き込まれ犠牲となる事態を、私たちは何度も目の当たりにしてきました。
特に、集団的自衛権を行使し日本が真っ先に支援をすることになるであろう米国は、「対テロ戦争」のもとで、多大な人命の犠牲を出し続けてきました。

 人の生命を奪うことは最大の人権侵害です。武力行使は、罪もない人々の生活の営みを根本から破壊します。日本が世界各地で殺戮と破壊、そして最も深刻な人権侵害に加担することを容認することはできません。

5.立憲主義・民主主義に違反する

 集団的自衛権の行使容認をはじめとする安保法案による武力行使・支援の拡大は、日本国憲法の平和主義に明確に違反するものです。著名な憲法学者らから、法案は違憲だとの声が次々と出されているにも関わらず、政府がこうした声にも全く耳をかさず、違憲の法律を強行的に通そうという事態にも私たちは重大な懸念を表明します。
 第9条に反する集団的自衛権の行使を容認するのであれば、憲法改正手続を踏んで国民投票に付し、主権者である国民の声によって決するべきです。日本の国そのもののあり方を変質させる重大な法案を、一内閣の専権で、憲法改正の手続も経ずに強行するやり方は、立憲主義に著しく反するものであると同時に、日本の市民社会、民主主義の否定にほかなりません。

6.国際協力活動への悪影響

 自衛隊による武力行使は平和主義国家としての日本のイメージを一変させ、紛争に対する中立国としての「日本ブランド」はもはや通用しなくなります。

 こうしたなか、NGOの活動環境は著しく危険なものに変わることは明らかであり、NGO職員や現地協力者が紛争当事者から攻撃されたり、「テロ」の標的となる危険性は格段に高まります。日本の中立性が失われれば、紛争に苦しむ現地の人達と日本のNGOが信頼関係を構築し、支援を行っていくことも困難になります。

 安保法案では「駆けつけ警護」を可能とする法改正も含まれています。政府から独立して紛争地での人道支援活動を進めているNGOに対し、政府が独自の判断で「駆けつけ警護」と称して武器を使用し武装勢力と交戦する事態となれば、NGOの中立性までが疑われ、取り返しのつかない犠牲を生み出すことを私たちは懸念します。そして、こうした国際協力NGOの懸念を日本政府は聞こうとすらしていません。

7.日本は非軍事による国際貢献を

 日本は紛争・殺戮の当事者でない中立の立場にあってこそ、紛争に苦しむ地域の人びとの信頼を勝ち取り、真の国際貢献ができると私たちは確信しています。日本が軍事貢献しないことで国際社会から後ろ指を指されると政府は主張しますが、アフガニスタンの紛争では日本が軍事貢献をしなかったから紛争が終わらなかったわけではなりません。むしろ逆なのです。日本が非軍事の独自の立場をより積極的に利用して紛争を対立を対話に変えることが出来なかったことが問題だったのです。
いま、日本政府がなすべき国際貢献は、軍事介入によって人命や人権の犠牲を新たに生み出すことではありません。紛争が絶えない国際社会にあって、紛争の原因を除去し、対話による解決をめざす地道な取り組みこそが必要です。第9条を堅持してこそ、世界でひとつしかない、日本独自の役割を果たすことができるのです。

 私たちNGO非戦ネットは、集団的自衛権を含む武力の行使を憲法の規程に反して容認する安保法案の強行採決に強く反対します。

 そして、いま思いを同じくする日本中の各界、各層と強く連帯し、安保法案の廃案を求めます。

以上
NGO非戦ネット呼びかけ人一同
http://ngo-nowar.net/

 
安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ