10の改正法と1本の新法(自衛隊海外派遣関連の恒久法)から成る安全保障関連法案は、ここでは詳論できませんが(例えば自由法曹団のWebサイトで逐条批判の意見書をご覧ください)、集団的自衛権の行使を容認する違憲の閣議決定を根拠に、恣意的解釈の可能な存立危機事態という概念を導入して、自衛隊に米軍等他国の軍隊の後方支援を可能にすること。周辺事態に代えて重要影響事態なる概念を導入して「自衛」隊の活動から地域限定を外すこと。
国会の事前承認なしに「自衛」隊の海外派遣を可能にすることなど、問題点が山積です。
戦争放棄を謳った憲法9条に対して、個別的自衛権と自衛隊保持を認める従来の政府解釈も、ほとんど歪曲と言うべき曲芸的な解釈ですが、今回の法改正は、多くの憲法学者が指摘するように、完全に憲法9条と矛盾しています。
今回の法案を法律とすることは、9条だけでなく99条にも違反し、立憲主義・法治主義の破壊です。法治主義の根幹は理屈が通っていることであり、学問の本質上、学者は論理を重視しなければなりません。その立場から見て今回の安保法案は断じて認められません。仮に法律成立となれば、安倍政権は自らの正統性を失い、民主主義の敵となります。主権者たる国民は必ずやこのような政権をその座から引きずり降ろさなければなりません。
北海道大学大学院文学研究科教員 戸田聡