今もう世界が資源と資本の収奪を巡って争う時代ではありません。地球がもう目いっぱいに使い尽くされてきて、生物界には第6の大絶滅が迫り、生態系と環境の変動に世界が協働しなければならない、人類が初めて経験する世界です。
経済成長と自国だけの発展のみを目途にした国際競争は方向転換しないと、もう人類は共倒れという時期に来ています。資源の奪い合いという人類が繰り返してきた愚行が、武力依存の平和バランスが現実的なのだという主張にそのままつながっています。
今や70億に迫る人口をどうするのかという時代です。それでもどちらが勝つかという発想をこの国が選択して、また血を流す愚をおかすならば、ヒトの歴史はやはりそうなのかと諦めるしかありません。それで経済が成り立つのかと言われれば、そのような経済と生活を最初から考えていないからとお答えします。そういう時代もヒトの歴史にはありました。自衛隊にもはや反対するつもりはありませんが、このまま進めば、いずれ徴兵制になります。
しかし、子供を持つ親として、学生を世に出す教員として、私は上記のような教育を続けるつもりです。血を流さないという思想は、究極の武士道だと私は理解しています。私たちが追求すべき安全保障は、生態系と生物多様性の保全、安定した生物生産に支えられた国際的共生への保障であるはずです。
西田治文 中央大学理工学部教授(植物系統進化学)