【安保法制反対 特別寄稿 Vol.224】 平和憲法は戦争直後の日本人にとって希望の光となった 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 天理大学人間学部宗教学科講師・渡辺優さん

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 すでに多くの法律家たちが指摘しているように、憲法との整合性を無視して集団的自衛権の容認に邁進する安倍総理の姿勢は、民主国家の根幹である法の安定性を危うくし、立憲主義の否定につながるものと危惧します。

 しかし、一思想研究者としての私に真に暗澹たる気持ちを抱かせるのは、現在の政治家や官僚たちの、人間理解の決定的な「浅さ」です。思うに、九条に象徴される現憲法の平和主義の裏には、戦争を経験した人々の、それこそ深淵の奥底まで覗き込むような、圧倒的な深度の人間理解が張り付いています。端的に言えば、それは人間がどれほど狂気を内に秘めた存在であるかという切実な認識ではなかったでしょうか。

 戦争において人間はどれほど残酷に、暴力的になりうるのかということ。戦争を始めるのは誰か数人の人間でも、ひとたび拡大した戦火と、そこに表出する狂気をコントロールすることは誰にもできないということ。そうした認識が戦争を体験した人々に広く深く共有されていたからこそ、平和憲法は戦争直後の日本人にとって希望の光となったのではないでしょうか。

 戦後70年が経つ今、私たちが学びなおし、取り戻すべきは、現憲法の根本にあるはずの人間理解の深さではないか。私はそのように考えます。

(渡辺優 天理大学人間学部宗教学科講師)

 
安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ