私は、現在国会で審議されている安全保障関連法案(安保関連法案)の廃案を求めます。その理由は以下の通りです。
安保関連法案は、武力行使と戦力の保持を禁じた日本国憲法9条に違反しており、憲法によって国家権力の暴走に歯止めをかける立憲主義の原則を破壊するからです。憲法違反の法案をひとたび許せば、徴兵制を含むさらに危険な法律の制定に道を拓きかねません。
国民の過半数が反対している安保関連法案の可決成立を強行することは、国民主権と民主主義に反するからです。
安保関連法案は、歴代政権が否認してきた集団的自衛権(他国が引き起こす戦争への参加権)の容認へと政府方針を180度転換させ、世界中の戦争・紛争に日本を参戦させることを可能にする「戦争法案」だからです。
戦後日本の大学は、日本国憲法と教育基本法を厳守することを誓い、平和と民主主義・学問研究の自由を原則に、有為な人物を社会に送り出してきました。
こうした大学の研究・教育の成果が人々の幸福や公共の福祉に結実するための絶対条件は、その社会が平和であり、一切の暴力の行使を否定し、個人の尊厳が大切にされる社会であることです。
もし、安保関連法案が成立し、日本が戦争のできる国に作り変えられるならば、それは学問研究および大学の危機をも意味します。
真理の探究を使命とする自由な研究・教育が否定され、国策遂行・戦争遂行のための研究・教育が強制されかねません。
卒業生や在学生を戦場に送るという、大学人にとって耐えがたいことが起きる恐れが高まります。
特に私が所属する教育学部は、教え子を戦場に送りだすための国策推進者としての教師を育てる学部となりかねません。
安保関連法案に反対する全国の大学関係者や若者をはじめ多くの国民と連帯し、法案の廃案に向けて力を尽くします。
(江利川春雄 和歌山大学教授)