【安保法制反対 特別寄稿 Vol.209】 国際的アカデミアネットワークを通じ、それぞれの国の政府に働きかけを 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 理系研究者・Yukiさん

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 政府は、違憲であることを意に介していません。このことを私たちは理解するべきです。彼らの論理の一つに、自衛隊だって違憲だと言われているではないか。(だから今回も我々の判断で法案は通す)というものがあります。ですから、既に違憲であることを主張しても大きな力にはならないのではないかと思います。私たちは、違憲であることだけではなく、先の山本太郎議員の国会質問にもあったような、多彩な議論、発想で相手に問いかけていく必要があると思います。

 また、この法案に賛成の一般の人たちの中には、第二次世界大戦前夜のような状況になった時に、相手が本気で武力を使うような状況に事態が流れた時に、「やはり実力をそなえておくべきだった」と後悔したくない、というのもあると思います。私たちは、このような意見に対して、他国の軍事力も脅威だが、自国の政府が国民を守るとは限らない、という危険性があるという例を上げるべきと思います。

 論理性、客観性、知性に基づいて行動する原則に不備を持つ政府が、政権を握り、国民が経済および教育を受ける権利に関して明らかに二極化しつつある日本で、政府が守ろうとするのは、いわゆる「勝ち組」の「国民」です。

 しかし、今勝ち組にいる人たちも安心はできません。勝ち組の中にも、勝ち組と負け組があり、事態が逼迫すれば、勝ち組の勝ち組のみを守る選択を政府はするでしょう。それを繰り返していって、自国が焦土と化しても「日本(一部の人たちの国)を守るために」戦争をすることになります。ですから、自国の政府を信用しすぎて、情報、軍事力を動かす権限を一極集中してはいけない、というのも一つの論点になるかと思います。

 また、国会議員だけでなく一般の人々の中にも「学者の言うことなど聞いていても平和はまもれない」という考えがあります。この人たちの失望に対して私たちは真摯に耳を傾けるべきです。たとえば、具体的にあるかもしれない脅威に対してはどうしたら良いのか? ということに私たちはなにも提案ができていません。

 しかし、私たちはここで思考停止してはならないと思います。私たちは現状を見る多彩な視点を一般の人たちに提示するとともに、具体的な方策についても提案を行っていくべきだと思います。一つの道は、非常に、地道ではありますが、民間交流が大切になると思います。

 たとえば、国際的アカデミアネットワークから声明をだすことにより、一般の人たちの信頼を取り戻すことはできないでしょうか? それぞれの方面でこれまで培ってきた国際的な研究者のネットワークを通じて共同声明をだすことを目指すのです。「それぞれの国のアカデミアは、国家間の問題を武力をもって解決することを共に望んでいない、それぞれの国の政府にそれぞれに働きかけていく」、という宣言をすることが具体的、有効な行動になるのではないでしょうか。

まだまだ、私たちが「思考停止しない」、「論理的、客観的」かつ「具体的で相互理解を促進する様々なアイデアの宝庫である」ことを発信し、国会議員のみなさんにも、市民の皆さんにも私たちの考えを理解してもらえる方策をどんどん出していくべきと思います。

(Yuki 理系研究者・「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者) 

 
安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ