【安保法制反対 特別寄稿 Vol.208】 日本語学習者の8割はアジアの人たち 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 大阪大学大学院言語文化研究科教授(日本語・日本文化専攻)・真嶋潤子さん

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 安保法案を早く廃案にすべきだと思います。

 私は外国人に日本語を教えることを専門にしています。またそういう専門職である日本語教師になりたい人の教員養成も仕事です。

 現在世界中の日本語学習者の8割は、アジアの人々です。

 かつて大日本帝国の「国語教員」が、植民地で「国語(日本語)」を教えた際、強制的に彼らの母語使用を禁じたり、飴と鞭でひどい教え方をした歴史があります。

 (たとえ教師個人には悪意がなかったとしても、)恥ずかしく、情けなく、苦痛を受けた人々に申し訳なくて、そのような「時代に流された」日本語教員にならないよう、自分の仕事の意味に自覚的でありたいと常々思っています。

 一方で、現在の無視できない割合の学習者が、日本のアニメや漫画を学習動機として学んでくれるのは、大変喜ばしいことだし、誰にも強制されずに日本語・日本文化を学んでくれるのは、本当に有り難いことだと思っています。日本の良いところも悪いところも理解した知日家を、多く育てたいと思ってやってきました。

 日本にいる留学生の多くが、日本の平和や安全を高く評価し、憲法9条があるので母国の親も安心していられると言います。日本に住み続けたい、就職してずっと居たいという声もよく聞きますが、参政権のない彼らには、今の日本で何が起こっているのか、よく見ておいてほしいと言っています。

 憲法を遵守すべきこの国の総理大臣はじめ与党の政治家が、9条の解釈を手前勝手に変えて、平和憲法を骨抜きにしようとする安保法案を、国会でゴリ押ししようとしています。日本国憲法によって、日本が曲がりなりにも「加害の歴史を反省して軍国主義に走らない国である」と了解してもらって、諸外国の信頼を積み重ねてきたこれまでの努力を、水泡に帰す愚行だと思います。

 個人と個人であれ、国と国であれ、相手は人間ですから、意見の対立から揉め事が起こることもあるでしょうが、それを解決するのは武力ではありません。言葉であり、対話であり、謙譲の気持ちであり、相手への寛大な思いやりであり、平和を希求し理想を追求する意思だと思います。

 私は、日本語学習者のみなさんと、信頼関係を基盤とした師弟関係を作り続けて行きたいし、日本語教師を目指す学生たちにも、まずは相手をよく理解し、信頼関係を構築する努力を続けるように言っています。

 信頼で結ばれた人間関係が、世界中の人々と縦横無尽に張り巡らされる時、問題の解決は決して武力によらないと信じています。平和であってこその日本語教育であり、日本語教育(あるいは外国語教育、もっと言えば教育全般)が世界平和に貢献できるかもしれないという希望も持っています。

 第二次世界大戦後も、武力を使い続けてきた国がありますが、解決するどころか、問題をさらに複雑にし、恨みを買い、テロの標的になり、戦争経験者の自殺が戦死者よりも多いと聞くにつけ、悪循環に陥ってしまっていると思います。

 武力では、「敵視された国の人々」のみならず、自国の民も不幸になることを示しています。(軍事産業だけは儲かっているらしいですが、それはつまり平和であっては困る人々がいるということです。人間として恥ずかしいことです。)

 安保法案を廃案にすべきだと思います。

(真嶋潤子 大阪大学大学院言語文化研究科日本語・日本文化専攻)

 
安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ