【安保法制反対 特別寄稿 Vol.206】 論理や真実、そして知性に対する冒涜 「安全保障関連法案に反対する学者の会」賛同者 上智大学国際教養学部教授・中野晃一さん

このエントリーをはてなブックマークに追加

 憲法違反の閣議決定や立法は、そもそも法治国家として許されるものではありません。

 9条を事実上無効化してしまうような解釈改憲は、立憲主義そのものに対する挑戦というほかないからです。

 必要最小限の集団的自衛権というごまかしで「小さく産んで大きく育てる」つもりであったことは、昨年の閣議決定の前から明らかでした。憲法が許さないことを勝手に解釈改憲し、法律で可能にしてしまえば、後はとりあえず政策判断として、一定の制限を加えているだけとなり、時の政府の一存で、いかようにもそんな制約は撤廃できてしまいます。

 これは多くの憲法学者が指摘しているように、クーデターというほかありません。

 こうした詐欺的な手法を用いることのもう一つの問題は、一旦ついた嘘を正当化するために、嘘をつきつづけなくてはいけなくなることです。

 その嘘とは、集団的自衛権の行使容認を含めた安保関連法案が、専守防衛の範囲を逸脱していない、というものです。

 武器はダメだけれど、弾薬なら他国の領土内で米軍などへ供給しても構わない、というのがその一例です。手榴弾ばかりかミサイル、はたまた核兵器さえ弾薬であって武器ではない、という完全に破綻しきった政府答弁が、参議院で引き出されました。

 しかしこうして嘘を強弁するドツボにはまっていくと、日本が戦うすべての戦争が、専守防衛、すなわち平和のための戦争であるという、戦前の軍国主義のロジックを招き入れてしまいます。

 さらに言うならば、この政権は違憲の安保法制整備を強行するのと同時に、「慰安婦」問題などに関わる歴史の改ざん、そしてマスメディアや学界に対する統制の強化を進めています。

 この三つの要素はすべて、論理や真実、そして知性に対する冒涜であるという共通点があります。学術分野や方法論を超えて、広範な学者の連帯が反対の声をあげるようになったのはこのためです。

 戦争は個人の尊厳を侵し、文化的な生活を破壊するものですが、戦争ができる国を作ろうとしている安倍政権は、すでにそこへ足を踏み入れているというほかありません。

 安保関連法案の廃案とともに、安倍政権の退陣を求めるものです。

(中野晃一 上智大学国際教養学部教授)

 
安倍政権の集団的自衛権にもとづく「安保法制」に反対するすべての人からのメッセージ