【IWJブックレビュー】農業経済学者からの警鐘「TPP、遺伝子組み換え、狂牛病…。安さの追求は命を削ること」 鈴木宣弘著『食の戦争~米国の罠に落ちる日本』(文春新書)

 東京大学大学院教授の鈴木宣弘様から『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』をご恵贈いただきました。

 「食の安全とは何か」。改めて考えさせられる一冊です。

 第1章『戦略物資としての食料』では、安さを求める消費者の性質や、経済学的視点からみる食の将来性など、「食料」を中心とした我々が抱える問題点を提示。第3章、第4章では、『食の戦争』をテーマに、遺伝子組み換え作物からTPPまで、「世界をとりまく食の政治問題」が論点ごとに紹介されています。

鈴木宣弘著『『食の戦争~米国の罠に落ちる日本』(文春新書、2013.8)

 最終章では、『日本の進むべき道、「強い農業」を考える』では、世界との「提携」をヒントとした日本の新しい農業のあり方が示されています。

 「食費をなるべく抑えたい」と考える我々にとっては少し大変かも知れませんが、鈴木氏が本書で指摘する通り、「食料に安さだけを追求することは命を削ることと同じ」なのかも知れません。アメリカや欧州での食料戦略に目を向けてみると、食の安全確保は生産者だけでなく、我々消費者にもあるのではないでしょうか。そう深く考えさせられる内容でした。

 食料自給率の低い日本は、オーストラリアなどのように大規模・低コストで勝負しては完全に負けてしまいます。しかし、本書のラストで論じられているように、東アジアや欧米との「提携」を大切にし、さまざまなモデル試算や議論を通して「強い農業」をつくりあげていくことが、「食の戦争」に負けない国になるための鍵なのかもしれません。

 刺激的な内容ですが、とても読みやすく、毎日の食に不安を持っている主婦の方や、TPPなどに関心のある方にもお勧めです。(2013/11/07発行【IWJウィークリー24号】より転載)

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