【献本御礼】ロバート・S. ボイントン著、山岡由美訳『「招待所」という名の収容所―北朝鮮による拉致の真実』(柏書房)

記事公開日:2017.9.23 献本御礼(ブックレビュー)
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 柏書房編集部の山崎孝泰様から『「招待所」という名の収容所―北朝鮮による拉致の真実』をご恵贈いただきました。

ロバート・S. ボイントン著、山岡由美訳
「招待所」という名の収容所―北朝鮮による拉致の真実
柏書房 2017/8/1


 本書はアメリカの人々に向け、北朝鮮による日本人拉致を伝えるために書かれています。

 執筆にあたり、歴史や人権、外交、市民運動などのうちのどれか一つを切り口として選ぶのではなく、1970年代に起きた拉致事件が「拉致問題」と認識されるまでの過程を筋道立てて書くために、著者はさまざまな角度から光を当てて全体像を描くという手法を取っています。

 ほとんどの章が、蓮池薫氏、奥土祐木子氏、曽我ひとみ氏など、拉致の被害にあわれた方々や、テレビ局プロデューサーの石高健次氏、北朝鮮代表者との水面下の交渉に当たった外交官の田中均氏、「救う会(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)」の会長であった佐藤勝巳氏など、さまざまな立場から拉致問題に関わった人々を主人公に据える形で書かれています。

 そこには日本国内の政治対立の影響を受けず、自由に書くことができるアメリカ人ならではのメリットも生かされています。本書の序文においても、「拉致問題には、日本政府から十分な注意を向けられていない」と指摘。「よど号」ハイジャック犯の妻である八尾恵氏は日本帰国後に、「有本恵子の拉致に関わったことを証言している」として、日本政府はなぜ「ハイジャック事件についての免責を『よど号グループ』に保証し、拉致に関する情報を引き出」そうとしないのかなどと、疑問をぶつけています。

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