永井幸寿様から『対論 緊急事態条項のために憲法を変えるのか』をご恵贈いただきました。
小林節、永井幸寿著
対論 緊急事態条項のために憲法を変えるのか
かもがわ出版 2016.4.26
安倍首相は、2016年夏の参議院選挙において、憲法改正の発議が可能となる3分の2議席以上の議席を与党で獲得することを至上命題として掲げています。そして、その改憲のいの一番に手を付けようとしているのが、「緊急事態条項」の創設です。
「緊急事態条項」とは、戦争や災害などの緊急事態に際して、人権などを大幅に制限するなど、憲法の一部を停止し、内閣に権力を集中しようとするものです。内閣総理大臣が緊急事態を宣言すると、内閣は法律と同一の政令を制定できるようになります。
本書は、2015年10月21日に開催した「災害対策を理由とする憲法改正についての報道及び関係者向け意志交換会~緊急事態条項『国家緊急権』の創設は必要か」の内容を書き起こし整理した項と、『世界』(岩波書店)2015年7月号に掲載された永井幸寿氏の「『災害をダシにした改憲』は間違いである」に加筆・修正したもの等からなっています。
1995年阪神・淡路大震災の際に事務所が全壊して以来21年、被災者支援に関わってきたという、本書の著者で弁護士でもある永井氏は、災害時に情報が集まるのは国ではなく市町村であるとして、「国家緊急権は災害が発生した後に泥縄式に(内閣に)権力を集中する制度なので、現実には役に立ちません」と厳しく断じています。
改憲派の重鎮、慶應義塾大学名誉教授である小林節氏と、「災害族」弁護士である永井氏が、「災害をダシにした改憲論」を徹底的に批判しています。全102頁というコンパクトな内容。今夏の参院選前にぜひ手にとっていただきたい一冊です。
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