本書は、SF界の巨匠10人が「戦争」をテーマに描いた作品を収めた小説集である。
小松左京『召集令状』は、差出人不明の「召集令状」が戦後派の若者たちに届くところから始まる。かつての赤紙そっくりの「召集令状」を手にしても、彼ら戦後派が抱くのは、恐怖よりは戸惑いである。むしろ強烈な反応を示したのは、「あの時代を知っている」世代だった。
巨匠たちの想像力〔戦時体制〕『あしたは戦争』
企画協力 日本SF作家クラブ
ちくま文庫、2016.1
まもなく「召集令状」は日本中にあふれかえり、受け取った者たちはひとり残らず姿を消す。誰も逆らうことのできない事態を前に、いつしか人々は、この目に見えないこの戦争をひとつの“事実”として受け入れていく。果たしてこの戦争をもたらした正体とは・・・・。
手塚治虫『悪魔の開幕』が描くのは、戒厳令下の日本である。自衛隊を軍隊と言い切り、憲法改正を断行した内閣は、核兵器の製造に踏み切る。国民の反対運度はことごとく鎮圧され、何万人もが闇に葬られた。夜間の外出は禁止され、新聞・テレビ・映画は検閲され、電話は盗聴され、手紙は開封される。次々と自由が制限されていくなか、秘かにある暗殺計画が企てられ、実行されようとしていた。
書き手はすべて戦争体験世代である。実体験に裏打ちされたことばが、重く響く。
「考えてみりゃ、おれは前にいっぺんこういう時代を経験してるんだ、その時とちっとも変わらん―― それが始まっちまえば、もう個人の力ではどうにもならんのさ。誰の力でもどうにもならん。こういう時代にうまれあわせたのが、不運ってもんだ」
(小松左京『召集令状』本書P.31)
彼らが描いた世界は、この先もずっと、フィクションであり続けてくれるだろうか。新たな「戦前」という認識が現実味を帯びつつあるいま、手にしてほしい一冊である。
(榊原千鶴)
所収作品一覧、( )内は初出年。
小松左京『召集令状』(1964)
山野浩一『戦場からの電話』(1976年)
筒井康隆『東海道戦争』(1965年)
手塚治虫『悪魔の開幕』(1973年)
海野十三『地球要塞』(1940~1941年)
江戸川乱歩『芋虫』(1929年)
今日泊亜蘭『最終戦争」(1965年、初出タイトル『世界最終戦争』)
辻真先『名古屋城が燃えた日』(1980年)
荒巻義雄『ポンラップ群島の平和』(1988年)
星新一『ああ祖国よ』(1969年)
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