アーサー・ビナード様から『もしも、詩があったら』をご恵贈いただきました。
想像力をかき立て、思考停止状態から解き放つカギとなる「もしも」という言葉。しかし、同時に「いちばん多く悪用された分野は、原子力のPRかもしれない」と、著者のアーサー・ビナード氏は指摘します。
アーサー・ビナード 著
『もしも、詩があったら』 2015.5、光文社新書
「まず原子爆弾づくりに否定的な科学者や政治家に対して、『もしも敵が先に開発したら!』と脅して黙らせた」。ところが、核開発は世界絶滅への道ではないかと気付き始めると、「アイゼンハワー政権が、がらりとPRの方向を変え、『もしも原爆のエネルギーを発電のためにつかったら、みなさんの電気代はゆくゆくゼロになること請け合いだ!』と言いふらし、平和利用の夢物語をでっち上げた」
しかし、「こんなペテンに対抗できる『もしも』」があるとして、著者はヘンリー・デイヴィッド・ソローの『森の生活』を紹介します。もちろん、ソローが生きていた時代には核開発はありませんでしたが、代わりに急ピッチで進められる鉄道開発がもたらす自然破壊と人間破壊に触れ、「もしもやめたら?」と問いかけています。
「『もしも原発をやめたら?』と問うための核心が、ソローのこの言葉にある」とビナード氏は訴えます。
こんな「もしも」を使った選りすぐりの名詩を、詩人のアーサー・ビナードが味わいながら紹介。言葉の、詩の魅力を存分に伝える、珠玉のエッセイです。
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