【献本御礼】西尾正道著『がんセンター院長が語る 放射線健康障害の真実』(旬報社)

記事公開日:2015.3.11 献本御礼(ブックレビュー)
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 「内部被曝の線量評価を眼薬に例えれば、眼薬は点眼して使用するから高い濃度で効果が期待できるのであるが、2~3滴の眼薬を飲んで全身の投与量に換算しているようなものである」

 原子力と放射線の国際機関、ICRPやIAEAなどが、科学的とはとても言えないような安全基準を制定していると言ったら、多くの人は疑うのではないでしょうか。

西尾正道著
『がんセンター院長が語る 放射線健康障害の真実』
旬報社 2012/4/23

 私たちは普段、それらの国際機関が善意によって行動し、私たちを守ってくれているような感覚を持っています。自分にはよくわからないけど、高度な科学を使って、緻密な計算に基づいて判断を働かせていると思っているのではないでしょうか。

 しかし、残念ながら、それらは架空の信頼だったのだと、本書の著者である西尾正道氏は記します。

 本書では、長年放射線治療に携わってきた北海道がんセンター院長の西尾氏が、丁寧に基礎的な知識を解説しています。放射線源の種類の違いや、性質、被曝するということがどういうことなのか。これらは、福島第一原発の事故後に生きる私たちの必須知識です。

 その上で西尾氏は、内部被曝というものが人体に与える影響を説明していきます。外部から一度だけ細胞に当たる放射線照射と、範囲は狭いが長く人体にとどまり周囲の細胞に影響を与え続ける内部被曝とでは、同じ線量換算で被害を考えるのは大きな間違いだと指摘します。尺度の問題で、人体の一部で強い障害を起こす状況でも、全身換算され、まるで安全のように判断される状況を強く非難しています。

 西尾氏によれば、残留汚染を低レベルに抑えるには莫大な費用がかかるため、内部被曝を意図的に無視した安全基準を制定しているのが現状だといいます。日本の原子力産業はICRPとの密接な関係にあり、これに反する研究は助成金が打ち切られるなど圧力がかかっているというのです。

 内部被曝や低線量被曝に関して、いまだ未解明なことが多いのが現状です。しかし、わからないから安全だ、ではなく、わからないから危険だとして対処するという基本的な感覚が、「原子力ムラ」には欠如しています。人体の安全を無視し、都合のいい安全を決めてしまうことは、私たちの安全を彼らのお金に換えるようなものではないでしょうか。本書は、そのことを、私たちに分かりやすい言葉で教えてくれます。

 

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