北海道がんセンター名誉院長で、「市民のためのがん治療の会」顧問の西尾正道医師から『がん患者3万人と向きあった医師が語る』をご恵贈いただきました。
1981年からずっと日本人の死因の第一位にあるというがん。現在では、男性の55%、女性の45%が、がんにかかると言われています。まさに日本人にとって、国民病とも呼ぶべき病気です。
西尾氏は、「がん患者3万人と向き合った」というがん治療のスペシャリスト。本書では、がんという病気発生の仕組みや、治療法を平易な言葉で紹介。また、「放置したほうがよい」などといったがんに関する誤った風説を指摘するとともに、日本の医療の問題点も検討します。
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さらに西尾氏の言葉は医療という枠組みを越え、人びとが健康に生きる権利を蔑ろにする社会状況への批判へと向けられます。たとえば、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)。本書で西尾氏は、TPP締結後の医療が、単なる利潤追求活動の一つへと様変わりすることに強く懸念を示しています。
また、放射線の影響への懸念が消えることがない福島第一原発事故。西尾氏は、低線量被曝による健康被害の可能性を無視しません。西尾氏によれば、「広島・長崎の原爆投下によるデータを基にした疑似科学」により、放射線による健康被害の研究は、進歩が阻まれている状態だといいます。
西尾氏がみるところ、がん罹患者の増加は、経済成長路線を押し進めた戦後日本のあり方と不可分です。原子力。農薬。化学物質。それぞれ、経済効率を優先させた結果、その利用が正当化されてきたもの。これらが、がん罹患増加の「外的要因」として考えられるといいます。
「命か経済かという二者択一はできない」。西尾氏は、「あとがき」にこう記し、お金ですべてが決まってしまう社会のあり方をこそ、見直すべきだと訴えます。
なお、西尾氏には、12月21日開催の「饗宴Ⅴ」に、原発パートのパネリストとしてお越しいただくことが決定しています。ぜひ、皆様、ご来場ください。(2014/11/29発行【IWJウィークリー第74号】より転載)
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