亜紀書房様から『原発広告と地方紙』をご恵贈いただきました。
本作は、大手広告代理店での勤務経験もある著者本間龍氏が、3.11以降メディアの姿勢に疑問を抱き、全国紙と雑誌メディアの原発広告の歴史を綴った『原発広告』の続編にあたります。この続編では、原発立地県の地方新聞に掲載された原発広告や社説・記事を原発建設当時から2010年まで最大約40年間を遡って収集しています。その膨大な資料をもとに、著者は地方紙ごとに異なる原発に対するスタンスを紹介しています。掲載資料は広告・記事が多かった福島、北海道、青森、新潟、福井が中心となっています。
本間龍著
『原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢』
亜紀書房、2014.10
原発礼賛傾向が強かったのは、福島の福島民報と福島民友の2紙であると著者は説明しています。特に70年から80年代において、経済的な発展に焦点をあてることに注力し、負の側面である原発そのものの危険性や交付金に頼る行政の危うさについて伝えず、原発誘致を進めた責任は大きいと指摘しています。
これに対して、北海道の北海道新聞の紙面は常に原発に対して批判的であり、新潟の新潟日報も原発に対しては是々非々の対応をとっていることを明らかにしています。
原発の安全神話が崩壊した今こそ必要となる、原発推進の歴史とも言える膨大な資料が掲載されています。本作においては、原発を推進していくために行われた広告によるイメージ戦略や電力会社が地方紙の大スポンサーとして君臨し、原発関連記事に大きな影響を与えたことを目の当たりにすることができます。
また、原発立地県であっても、新聞社により原発に対しての考え方が全く違うことに気づかされます。これまでに何気なく目にしていた広告が、大きな意図を持っていたということをあらためて認識させられる力作です。
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