【IWJブックレビュー】日本人は今、目の前にある危機を危機として認識できるのか カレル・ヴァン・ウォルフレン著『日本に巣喰う4つの”怪物”』(角川学芸出版)

 ジャーナリストでアムステルダム大学名誉教授である著者のカレル・ヴァン・ウォルフレンさん御本人から『日本に巣喰う4つの”怪物”』をご恵贈いただきました。

 本書は、過去にIWJの単独インタビューにも出演いただいている、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の著書で、『政治に巣喰う怪物(ポリティカルモンスター)』を4つに分類し、現時点で日本の民主主義を脅かす怪物について解説します。論点は日本だけにとどまらず、日中韓問題、そして著者が「新たなる冷戦」と位置づけるウクライナ問題まで広がり、国際的な視点から日本に襲いかかる脅威を明らかにしています。

カレル・ヴァン・ウォルフレン著『日本に巣喰う4つの”怪物”』
(角川学芸出版、2014.10)

 著者は、日本を蝕む最大のモンスターに絶対的な答えはないとしながらも、現時点で最も日本の民主主義を脅かしているのは、日本のメディア集団だと指摘します。日本の新聞社のトップは「現状維持中毒」を患い、現行制度の屋台骨が崩れるようなことが起これば頑強に抵抗します。これは鳩山政権当時の報道姿勢から一目瞭然です。日本の大新聞を含む主流派メディアが日本の真の民主化を阻む最大の障害だと結論づけています。

 本書の執筆中に起こったウクライナ危機は、日本にも大きな影響を及ぼす可能性を秘めていると著者は指摘します。この問題について、西側主要メディアの論調だけを捉えていては、事態を正確に把握することはできません。ウクライナ危機」の真の発端は何か。それはアメリカが持てる力をすべて行使して、世界支配を実現させようとしたネオコンに行きつきます。本書では、そのことが証拠を含めて詳細に論じられます。この危機を通じて日本人は考えるべきだと著者は主張します。かげりゆくアメリカ帝国にしがみつくのか、ユーラシアの2大大国と適切な外交関係を結ぶのかと。

 怪物に関しては、そのほかにも『特定秘密保護法』『金権政治』『TPP』などが自立した民主主義国家の根幹を揺るがすものとして解説されています。さらに日本人の資質にも触れ、『世界平和を脅かすものに対してやや無関心』と指摘したうえで、日本に巣喰う怪物を察知し、それらに日本の人々が関心を持つことが必要だと説いています。

 日常に広がる情報の表面だけをすくっていては、本質を見誤ることを本書は示唆します。『怪物』は生活の中に巧妙に入りこみ、国民をコントロールしていきます。何が起きても『仕方がない』と流してしまう気質では、『怪物』に好き放題やられることに気づかされます。今、流されている情報の本質を見極めることは難しいかもしれません。しかし、その情報に関心を持ち、疑問を持ちながら行動していくことが、重大な局面を迎えている日本にとって必要なことだと本書は教えてくれます。

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