【IWJブックレビュー】日本はもう一度敗戦直後に戻ったつもりで国を新しく作り直さなければならない 矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル)

 株式会社集英社インターナショナルの、小林恵理子様から『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』をご恵贈いただきました。

 著者は『戦後史の正体』『日米地位協定入門』など「<戦後再発見>双書」シリーズの企画・編集責任者である矢部宏治氏です。本書は著者が沖縄で感じた違和感からスタートしています。なぜ市街地の上を米軍機が自由に飛んでいくのか? なぜ悲惨な原発事故を起こした日本が原発再稼働を推進しているのか?そして、それらの疑問にはれっきとした理由があることを著者は明らかにしていきます。

矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』
(集英社インターナショナル、2014/10/24)

 「沖縄の謎」では、沖縄の地上の18%、上空の100%は米軍に支配されており、米軍機は米軍住宅上空以外なら自由に飛べるし、日本の法律も適用されないと説明しています。さらに、憲法と条約と法律の関係に触れ、「条約は一般の法律より強いが、憲法よりは弱い」のが普通にもかかわらず、日本では1959年の砂川裁判により、安保条約とそれに関する取り決めが憲法を優越する構造が確定したことを明らかにします。この判決については、その根拠を「統治行為論」と呼び、司法は国家の重要な判断を回避する立場をとると説明しています。

 「福島の謎」では、大事故を起こした福島原発で誰も責任をとらない原因は、やはりここにも「統治行為論」が存在すると推測しています。そして、未だに原発再稼働を推進する裏には、「日米原子力協定」があると説明します。これは日米地位協定と同様の法的構造を持ち、「廃炉」、「脱原発」といったことが日本の政治家だけでは決められないようになっていると説明しています。

 「最後の謎」で著者が重要なことと主張しているのは、「安保村(日米安保推進派の利益共同体)」の歴史と構造を知り、1945年時点に戻り周辺諸国との関係をやり直すことです。そして、米軍基地、憲法9条2項と国連憲章の敵国条項の問題を同時に解決する状況をつくりだすことだと話しています。
 
 本書を読み進めていくと気分が落ち込んでいきました。日本が直面している厳しい現実を突きつけられ、自らの無力感に襲われました。しかし、現状から目をそらすことこそ、利権に群がる人々の思うつぼであり、そうして戦後70年が経過したのだと気づきました。本書では、現実に気づき動き出している人がいることにも触れられています。私達日本人が日本を真の独立国家、民主国家にするために、一人でも多くの人に読んでもらいたい良書です。

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タイトル 本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (「戦後再発見」双書2)
著者 前泊 博盛
実施期間 2013年3月~
サービス内容 TOPページバナー及び、特集ページ作成等
発行部数 3刷5万部
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