岩上安身より

~ ごあいさつ ~

 12月14日、戦後最低の投票率のなか、有権者の4分の1という得票率にも関わらず、与党の自公は憲法改正の発議が可能な3分の2の議席を維持するという結果になりました。「12.14」は、民主主義の終わりを意味するのでしょうか? 悲観と失望、冷笑と無関心が鈍色の冬の雪のように覆っているかのようです。

 アベノミクスの異次元レベルの金融緩和、それに伴う円安、株高、物価高、消費税増税、実質賃金の継続的な下落、秘密保護法や集団的自衛権の行使容認、武器輸出緩和、原発再稼働、TPP推進、そして憲法改正。安倍総理は「この道しかない」と掲げたこれらの諸政策を、「有権者に信認された」として、今後、推進をより加速していくに違いありません。

 しかしながら、公示日後に、大手マスコミが一斉に自民党単独で3分の2を超える圧勝か、などと報じたものの、実際には、自民党は議席を微減させ、得票数も12万票減らしています。自民党は単独で「圧勝」したわけではなく、国民の大多数が白紙で「委任」したとはいえません。

 何よりも、自民党単独で3分の2以上を占めたわけではなく、「一党単独で改憲発議が可能」というゴールラインはまだ割られていません。ゴールラインぎりぎりですが、ターンオーバーはこれからです。民主主義の本質は、反撃であると、私は思います。ハイリターンを求める資本の強欲な増殖の運動と、権力の横暴な拡大は、常に民主主義に先行する。その強欲と横暴に対する反撃として、民主主義は常に遅れて生起するのです。

 残念ながら、既存メディアは萎縮してしまっています。苛烈な朝日新聞バッシング、そして今年12月10日に施行された秘密保護法。本来、権力の暴走を監視し社会に警鐘を鳴らすべき既存メディアは、青ざめた表情で、その批判機能を自ら封じているかのようです。

 であるからこそ、独立メディアであるIWJが、「反撃」の「ターンオーバー」を本気で呼びかけなくてはなりません。「情報主権者」たる国民に、巨大資本と国家権力の暴走に抗う人々の声を伝えるべく、IWJは今年も「饗宴」を開催します。

 3.11から4年が経った今、「原発と被曝」を取り巻く状況はどうなったのか。

 アベノミクスや消費税増税、そして日本の富を外資に売り渡すTPPなど、これら「グローバル経済」の正体は一体何なのか。

 在特会の排外デモに代表される現代の「ヘイト問題」の根底に流れる歴史的背景とは何か。

 「軍事的植民地化」に抵抗する沖縄と、「対米従属」を深める安倍政権の「集団的自衛権の行使容認」、その先にある「憲法改正」の真の狙いはどこにあるのか。

 そして、米国の軍事下請け化する日本が向かうその先には、何が待ち受けているのか。パレスチナ、ウクライナ、「イスラム国」が台頭する中東情勢など、世界では今何が起こっているのか。

 安倍総理が「この道しかない」として国民を引きこむその「道」の先に、何が待ち受けているのか。「この道」以外の「道」は本当に見つけられないのか。

 IWJにゆかりのある16人の輝ける気骨ある知性に、これらの多様な、しかし密接に繋がり合うテーマについて、政府が流す嘘を暴き、既存メディアが伝えない真実を論じて、もうひとつの「道」を探りあてたいと思います。

 沖縄では名護市長選、沖縄県知事選で、普天間基地の辺野古移設に反対する「オール沖縄」候補が勝利をおさめ、衆院選でも小選挙区すべてで自民党候補を下し、当選しました。

 沖縄は、安倍総理の唱える「この道しかない」という「道」以外に、「道」はある、と確信をもって示しました。なぜ、こうした「もうひとつの道」を示すことが沖縄以外ではできなかったのか、真剣に考えるべき議題のはずです。

 安倍政権のひた走る「道」の先には、あと戻りのできない改憲とともに、軍事ファシズム体制が築かれ、大多数の国民が窮乏する中、原発を抱えたまま、勝ち目のない無謀な戦争に突入して、国家財政も破綻するという、救いようのないシナリオしか見えません。

 「この道しかない」などと言われて黙っているときではなく、「そんな道に誰がつきあうものか」と、はっきりと言葉にして「No」を表明するべきときでしょう。国民は奴隷ではない。主権を持つ主体として、意志を表すべきときです。

 政治的に「眠らされてゆく」日常の中にあって、それでも国民の中には、安倍政権の矛盾や危険性に気づき、危機感を持ち始めた人も少なくありません。IWJはなお一層、すばやく警告を発し続けなければならないと考えています。「炭鉱のカナリア」のように、です。

 IWJは、市民一人一人の皆様に、直接支えられるメディアです。「饗宴Ⅴ」は、設立から4周年という節目に、日頃からお支えいただいている、会員とサポーターの皆さん、そして「中継市民」をはじめとするボランティアの皆さんへ送る、懇親と謝恩の場です。

 消費税増税や景気悪化の煽りを受け、多くの中小企業と同じく、IWJも厳しい財政状況が続いています。1年以上、会員数5000人で維持してきましたが、現在、4600人台まで落ち込んでおります。

 本来であるならば、コストのかかるイベントは、規模を縮小してこじんまりとやるべきなのかもしれません。そういう意見は内外から多数寄せられました。しかし、この日本の危機的状況のなかで、折れずに「希望」を説き続ける論客たちとともに、反撃の声をあげるためには、「こじんまり」とした集まりにまとめるのはたいへん困難でした。

 さんざん考えた末、今回は、逆に、昨年までの、テーマを三段重ねにしたものから、テーマを五段重ねに増やしました。「最初にして最後」になるかもしれない史上空前の規模で行うことを決めました。

 21日の「饗宴Ⅴ」は、楽観的で持続的な「明るいレジスタンス」のための狼煙、笑いながらの咆哮、ゴールラインぎりぎりからのターンオーバーのための集いとさせていただきます。

 ちなみに、フットボールなどで使われるターンオーバーとは、攻守が転じること、防御に回っていた側が反撃に転じることを指しますが、同時にこの言葉は、細胞が新陳代謝する、すなわち生体にとって「再生」をも意味します。

 「饗宴」の当日は、多彩なゲストの皆さんと交流を深めていただき、「この道」以外の未来を、ともに切り開いてゆく機会になればと存じます。

岩上安身