岩上さんの空手の後輩にあたる川保天骨さんより、『ブルース・リーの実像 〜彼らの語ったヒーローの記憶』を恵贈いただきました。
子供の頃から、金曜ロードショーなどで放送されるジャッキー・チェンの映画を、よくリビングで家族と観ていた記憶があります。放送翌日は必ず、それぞれジャッキー・チェンになりきった友だちたちと「アチョ~!」「アタタタ〜!」などと奇声を発して殴りあいました。「酔拳」などは、特に面白がって真似した覚えがあります。
チャン・チャップリン著『ブルース・リーの実像 ~彼らの語ったヒーローの記憶』
(オルタナパブリッシング社)
カンフー映画の立役者・ブルース・リーは、脳が肥大化する「脳浮腫」で、亡くなりました。僕が生まれる12年も前の話ですが、彼の名は、幼い頃から自然と頭に入っていました。世代的に、ジャッキー・チェンと違ってブルース・リーの映画を観る機会はあまり多くはありませんでしたが、両サイドに黒の縦ラインが入った、あの黄色い戦闘服が強烈で、幼心にとても格好よく映ったのです。
漠然とカンフーに憧れを持つ子どもたちにとって、ブルース・リーはジャッキー・チェンの上に君臨する「伝説」の人物であり、カンフーの「象徴」として、無条件にリスペクトすべき対象だったのです。
それなのに…
そんな伝説のカンフースターが、犬を怖がっていたなんて…。
チャップリン・チャン著『ブルース・リーの実像 〜彼らの語ったヒーローの記憶(オルタナパブリッシング社)』は、ブルース・リーが主演した映画の監督や幼なじみ、「燃えよドラゴン」の弟子役のトン・ウェイ氏など、等身大のブルース・リーを知る12人の人物がブルース・リーを語る、貴重な証言集。
この本の中では、ブルース・リーが犬を怖がるあまり、犬と別撮りで撮影して、その後、まるで共演しているかのように編集していたことや、ブルース・リーが日本料理を好み、一晩で日本酒を銚子20本分も飲めたこと、子どもの頃は喧嘩ばかりしていたことなど、ブルース・リーの素顔(我々にとっては裏側)が赤裸々に語られています。
つい笑ってしまったのですが、こんな話もあります。
幼少期より中国武術の修行をしていたブルース・リーは、映画の撮影の際、リアリティにこだわるあまり、「これ以上は闘えない。これ以上殴れば、普通であれば全員死んでしまう」としてアクションを中断。「いや、これは映画だから…」と監督が説得を試みるも、リーは「だめだ、やっぱりできない!」とうつむく。監督は頭を抱える――。
まだまだカンフー映画というものが確立しきっていなかった時代ならではの苦労や秘話が満載。茶の間からはうかがえませんが、ブルース・リーも四苦八苦していたのです。そして、その苦労を、本人は楽しんでいたでしょう。
これからの寒い時期は、外出が億劫ですね。家にこもってブルース・リー映画を観返しながら、この本をめくってみてはいかかでしょうか。伝説上の人物、ブルース・リーの人間らしい意外な一面に触れることで、ほっこり温まることと思います。(IWJ 原佑介)(2014/11/23発行【IWJウィークリー第73号】より転載)
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