日刊ベリタ編集長で農業ジャーナリストの大野和興氏さんご本人から『百姓が時代を創る』をご恵贈いただきました。
本書は、農民であり、作家でもある山下惣一氏と農業ジャーナリスト大野和興氏による日本の農業、農村、農民の来し方行く末をテーマとした対談の記録です。グローバリゼーションが進む農業の国際的な背景、大型農業のその後、政策から切り捨てられる大多数の百姓の生きる道について語ります。
昭和三十年代は農耕社会だった日本、その後の高度経済成長期に農村から人が出ていき、都市国家が形成されていきます。核家族化が進む中、この家庭にいかに安い食料を与えるかが農業・食糧政策上の課題になります。その結果、単一の農産物を大量につくる産地が政策的につくられ、そこから大量輸送された農産物が団地で消費されることになります。この構造の中で、金を稼がないもの、効率の悪いものは徹底的に排除していく差別と蔑視のイデオロギーがでてきます。
今、農村では何百年続いた農家が一代でつぶれようとしています。しかも一戸だけでなく、集団でつぶれています。新米価格は10年前の5~6割、畜産物も野菜も大幅下落しています。これに日本政府、マスコミ、経済界による『日本の農業は零細だからだめだ』という宣伝効果が加わります。これで、跡を継ぐものがいなくなり、地域社会全体の崩壊につながっています。
「耕す人がいなくなっているのだから、土地を市民に解放して、所有は地域のままにする。企業には解放しない。日本の農村は大百姓も小百姓もみんなで生きていく」と山下氏は主張します。そして、大野氏は「自分で作るから食費も心配ない。農作業で働く時間が減る分はワークシェアリングで仕事を分け合う。農を楽しみ、ゆったりした気分で暮らす。農の力は人を育てる。土に触れる、生き物を感じる、これらはすべて農の世界であり、人として生きていく基本」と語ります。
効率の悪い人には生存を許さない時代が日本の農業を追い詰めています。海外から安い食糧を輸入すれば良いという考えが、自らの首を締めることにつながることを自覚しなければならないと本書は警告します。『農業』の枠にとらわれず、「グローバル化とは何か」を知り、自分がどのように生きていくかを考えさせられる1冊です。
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