『市民の観点で死刑制度をとらえる場合、国民に死をもたらす「死刑権力」という見方が欠かせない。今までの死刑存廃議論には、この点がそっくり落ちていた』
”死刑肯定論”このタイトルが意味するところは、死刑について今まで行われてきた議論に潜む矛盾を解消しようという試みです。まず著者は本書の1/3のページ数を割いて、今までの死刑存置論-廃止論の根拠をことごとく否定していきます。意外な展開ですが、現在の定義では、教育としての刑、犯罪予防のための刑、それらが少なくとも終身刑ではいけない理由がない、と説明。またフーコーやバタイユ、マルクスなど多くの歴史的な思索を検討し、死刑がどう位置付けられてきたかを丁寧に検証していきます。
世論の大半が持つ、死刑に肯定的な感情、具体的には被害者側に共感し、犯人に復讐を行うことを求める感覚を復讐原理と規定し、それの代行者である国家権力について論じていきます。著者によれば、復讐権は権力論の中では自然だといいます。その中で著者は、むしろ幾度も繰り返し国家権力の危うさ、暴力性について訴えています。それは行き過ぎた資本主義が持つ、生産能力の低い人間はいらないという優生学的傾向や、死刑囚の内面に立ち入り、「悔い改めて死んでゆく」国家精神を押し付ける制度に現れているといいます。
また、死刑を求める世論を、「福祉国家」から「治安国家」へ変貌していく日本の現状や戦争との関わりの中で考察していきます。秋葉原通り魔事件のような社会問題が背景にある中で起こった事件に関して、慣例や心象的死刑判決について述べています。
他にも死刑に関わるたくさんの議論ー絞首刑は人道的か、などーを丁寧に思索しています。そして現状の死刑の非合理的、非理論的さを説き、再定義・再構築を促しています。『死刑肯定論』のタイトルから受ける印象に反し、それぞれ読んだ個人の中で、死刑に関する根源を問い、それぞれの結論を導き出せる、良著でした。少しでも死刑に疑問や興味があるなら、大袈裟ではなく必携の一冊でしょう。
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