【特別寄稿】堤防決壊をした宮城県大郷町も安倍政権(首相)の職務怠慢による人災の可能性大!橋下徹氏「シビアな治水行政論」の虚構 2019.11.4

記事公開日:2019.11.4取材地: テキスト動画
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(取材・文:ジャーナリスト横田一)

 台風19号で堤防が決壊した宮城県大郷(おおさと)町を枝野幸男・立憲民主党代表が視察した10月20日、被災状況を説明した田中学町長はこう言い放っていた。「矢板(鋼鉄版)を打ち込むなどをして堤防の強化をして欲しいと国交省や自民党などに要望したのに、『予算がない』と言われた。今回、(決壊をした堤防の)仮復旧で矢板を打っていますが、(台風19号襲来前に)もっと早く打ってもらえれば、堤防が強度を増して大丈夫だった。そういう要望をずっとしている中で堤防が決壊してしまった! 住民は『悔しいな』という思いですよ」

▲枝野幸男・立憲民主党代表(左中)と田中学・大郷里町長(右手前)(横田一氏提供)

■大郷町長インタビュー

 大郷町での台風19号被害もまた「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策を続けた安倍政権の人災に違いない。自治体トップが嘉田由紀子・参院議員(前滋賀県知事)や今本博健・京大名誉教授らが提案していた安価で迅速にできる堤防強化を訴えていたからだ。

 橋下徹氏は「シビアな治水行政」を討論番組で紹介、堤防強化を怠った安倍政権を免責する役割を買って出ていたが、宮城県大郷町と石森町(共に堤防決壊)を視察した枝野氏は、最後の囲み取材でトップダウン型から地方分権型の治水政策への転換を次のように訴えた。

 「地域の声、地元の皆様が長年にわたって、どこがどう弱い、どういう時に災害が起きるのかということについてはいろいろな蓄積があるので、それをしっかりと受け止めた形で復旧・補強をしていなかいとならない。そういった意味での本当の分権化。(災害対策)予算は国が出していかないとできませんが、知恵やアイデアは地域の声をしっかりと受け止めていくことが重要だと思います」

 これを受けて私が「一ヶ所目(大郷町)で住民が堤防強化を要望していたのに実現しないまま被害を受けたことについては、どう受け止めたのか」と聞くと、こんな答えが枝野氏から返ってきた。

 「国が予算を出してやっていかないとならない災害対策だからと言って、トップダウン型では投資の有効活用にはならないのではないだろうか。一番弱いところ、必要なところというのは住民の皆さん、地域の皆さんが一番よく分かっている。そうした現場からの声にもとづいて防災のための投資、資源投下をしていかないということを強く感じています」

▲視察後囲み取材に答える枝野幸男・立憲民主党代表。隣が視察に同行した地元選出の石垣のりこ参院議員(横田一氏提供)

■枝野代表視察後の会見

 枝野氏の「分権型治水行政」はあるべき姿に違いないが、現在の安倍政権下では民意軽視の「トップダウン型治水行政(ダム最優先・堤防強化二の次)」が罷り通っている。地元住民の堤防強化要請が国の治水行政に反映されないまま、台風19号で被害を受けてしまったからだ。

 文書でも確認できた。町役場の防災担当者に聞くと、「堤防強化の要望を周辺自治体と一緒に毎年出していました」と教えてくれた。たしかに「江合(えあい)・鳴瀬・吉田川水系改修促進期成同盟会」(会長・伊藤康志大崎市長)が去年11月7日に作成した「江合・鳴瀬・吉田川三河川改修促進に関する要望書」を見ると、堤防決壊をした吉田川(粕川(かすかわ)地区)については次のような要望が記載されていた。今回の台風19号で堤防決壊をしたのは、この中にある「粕川」地区だ。

 「円滑な水防(=水害防止)活動等に資するよう堤防天端狭隘箇所(粕川、山崎、海老沢、丸山、袋地区)の堤防天端拡幅等による堤防強化の早期着手をお願いします」

 この要望書が提出されたのは、西日本豪雨から4ヶ月後の去年11月。安倍政権(首相)が倉敷市真備(まび)町での堤防決壊(51名死亡)を真摯に受け止め、要望書が出された大郷町を含む全国各地の決壊リスクの高い堤防強化を速やかに実施していれば、今回の台風19号の被害が軽減できたのは明らかなのである。

 しかも田中・大郷町長が「矢板(鋼鉄版)」と口にしたように、安価で迅速な堤防強化工法はあった。まさに「トップダウン型」(枝野氏)の国交省の河川政策「ダム最優先・堤防強化二の次」が招いた人災であることは確実だ。そのことを、大郷町の堤防決壊現場は雄弁に物語っているのだ。

大郷町は安倍政権(首相)の職務怠慢による人災現場――堤防決壊の真備町と同じ「森林公園状態」(河川維持管理不足)出現

 堤防決壊部分の復旧工事が急ピッチで進んでいた吉田川沿いに歩いていくと、「西日本豪雨災害の教訓を活かさなかった安倍政権(首相)の人災だ」と確信する光景が現れた。対岸の河川敷に木々が被い茂る「森林公園状態」になっていたのだ。堤防決壊をした小田川と瓜二つの状況である。去年(2018年)7月11日に真備町の避難所を訪れた安倍首相に河川維持管理不足を直訴した竹内昇さんの言葉が蘇ってきた。

▲堤防決壊現場の対岸が「森林公園状態」の吉田川(横田一氏提供)

 「今回は大変でした」と声をかけた安倍首相に対して竹内氏は次のように訴えていたのだ。「(堤防が決壊した)小田川なんだけれども、河川敷に砂が堆積して、ススキは生える、柳の木はものすごく生える。それを切っていない」「橋が4、5本かかっているけれども、橋の真ん中に行ったら下の(中州の)柳の木が大きくなって、手でさわれるぐらい伸びている。水さえあれば、ものすごく大きくなるのだから」

▲竹内昇氏(横田一氏提供)

 そして避難所を訪れた私にも、竹内氏は同じ説明をしてくれた。

 「2年ほど前に『河川の維持管理が大切』ということを小耳に挟んでいて、それで見に行ったのです。小田川に4本ぐらい橋があって、ほとんどきれいな河川はないわ。どこも大なり小なり柳の木は生えておる。橋の真ん中まで行って手を伸ばすと、柳の木に届くくらい生えていて。『これは危ないな。もう少し掃除しないといけないな』ということを総理に言いました。総理の隣に伊原木(隆太・岡山県)知事もいて耳が痛かっただろうと思うけれども、わしは声を大にして言った。あれは『天災』ではなくて『人災』だ。河川の維持管理をしていなかったので、こういうことになった」

 「(木を切って小田川の水がスムースに流れていれば、全然違ったとの問いに)残念です。木を切って維持管理をきちんとしていれば、恐らく、こんな結果にならなかった。(中略)実際の川幅を1としたら、そのうち4分の3くらいは木が生えていて、水が流れるのは4分の1くらいでしかない。今回のような豪雨になったら、川幅すべて4分の4、水が流れないとおかしい。川幅全体で流れていたら堤防も切れません。それを総理に言った。総理は『大変でしたね』と言っていましたが、社交辞令ですよ。すぐ反映させないといけない」

 「4分の3は木が生えて流れない状態になっていた。血管と同じですよ。コレステロールが貯まってしまって、ほんの一部しか流れないようになっていた。4分の1ぐらいしか流れない状態になっていた」

▲小田川の河川敷(中州)に繁茂した大量の木々(横田一氏提供)

 竹内さんの「社交辞令」という予想は見事に的中した。安倍首相は「河川維持管理不足(河川敷の『森林公園状態』)が堤防決壊の一因」という被災者の訴えを聞き流すだけで、治水(河川)政策に反映させることを怠ったのだ。本来なら口癖の「国民の生命や財産を守る」を実践すべく、真備町と同じような「森林公園状態」がないのかを全国一斉点検、特に堤防決壊リスクの高い地区については「速やかに樹木伐採を済ませておくように」と指示しておかないといけなかったのだ。

 しかし安倍首相は真備町を訪れて「被災者に寄り添っています」というポーズ(パフォーマンス)をしただけで事足り、現場で聞いた話を国交省に伝えて河川維持管理不足を改善させなかった。堤防強化の要望を実行に移さなかったことに加えて、河川維持管理不足の直訴を聞き流して「森林公園状態」であったことも、大郷町の堤防決壊の原因に違いない。二重の意味で安倍政権(首相)の職務怠慢による人災と言っても過言ではない。

 このことは堤防決壊現場を吉田川の上流から下流に向かって1時間ほど歩けば、誰もが実感できる。川が蛇行した先が決壊地点。濁流が緩やかなカーブを曲がりきれず堤防を越えて越水、住宅側の堤防を侵食して決壊に至ったことが容易に思い浮かぶからだ。田中町長ら堤防強化の要望をした地元関係者は「ここに矢板を打ち込んでいれば、越水はしても堤防決壊は免れて被害は激減できた」という思いを抱いているに違いないのだ。

 しかも対岸の河川敷は木が繁茂する「森林公園状態」となっていた。伐採されていれば、豪雨時には堤防と堤防との間全体に水が流れるが、吉田川粕川地区では「森林公園状態」分、実質的な川幅が狭まっていたのだ。

▲堤防決壊現場付近(横田一氏提供)

 「(豪雨時には)川幅すべて4分の4、水が流れないとおかしい」と強調した竹内さんは河川敷の”森林公園状態”を「血管にコレステロールが詰まったようなもの」と例えたが、吉田川も同じ状況に陥っていたのだ。

 先の要望書にも記載があった。「洪水流下の阻害要因となる河道内樹木の伐採、水門、揚水機場、樋菅等の維持修繕など、より一層の適切な河川管理の推進をお願いします」という部分だ。

 堤防決壊を招く二つの要因(「堤防強化不足」「杜撰な河川維持管理」)が、真備町の小田川にも大郷町の吉田川にも共通して存在していたことは、もっと強調して全国に伝えられなければならない。そうした報道や検証もあまりに少ない。西日本豪雨災害の教訓を活かさなかった安倍政権(首相)の職務怠慢としか言いようがないではないか。防災対策を怠った国土強靭化空白地帯で起きた人災といえるのだ。

 なお真備町での堤防決壊被害について竹内さんは「賠償を求める集団訴訟が起きても不思議ではない」と私に語っていたが、大郷町の堤防決壊に対しても「人災であるのは明らか」として被災者が損害賠償請求訴訟に踏み切る可能性は十分にあるだろう。

 安倍政権(首相)の職務怠慢を免責する橋下氏の「シビアな治水行政論」の虚構ぶりも際立ってくる。上流は人口が少ないので下流を守るための犠牲は止むを得ないというシビアな主張というわけだが、大郷町における国交省の治水行政は正反対の「大甘」としか言いようがない。橋下氏の発言は、西日本豪雨災害の教訓を活かさず、被災者の直訴も聞き流した安倍政権(首相)の職務怠慢から目をそらせるための発言であると改めて実感するのだ。(※前出「【特別寄稿】下流の都市部のために上流部の水害を容認する!? 「歴代自民党政権の人災」の本質を直視しない橋下徹氏がうそぶく「シビアな治水(河川)行政」――ダム最優先・堤防強化二の次の河川政策が招いた堤防決壊続出の台風19号被害 2019.10.26))

 橋下氏の主張に惑わされてはならない。安倍政権がいまだに続ける「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策の責任追及こそ最重要課題なのだ。

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