内田雅敏弁護士「隣国全てが友人になるのが究極の安全保障! 歴史問題の解決こそが日本の安全保障に繋がる!」~ジャーナリスト・志葉玲氏主催「韓国叩きおかしくない? 徴用工問題の本質と和解への道」勉強会 2019.10.5

記事公開日:2019.10.6取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材・文:神山樹乃)

※2019年10月7日、テキストを追加しました。

 2019年10月5日、東京都国立市のスペースコウヨウにて、ジャーナリスト・志葉玲氏主催の「韓国叩きおかしくない? 徴用工問題の本質と和解への道」が開催された。ゲストは、戦時中の強制労働問題に詳しい弁護士の内田雅敏氏。内田氏は、靖国参拝や沖縄、憲法などに関しての著書も多数出版している。今回の勉強会は、そんな内田氏から配付された資料をもとに進められた。主催者である志葉氏も思わず聞き入ってしまった内田氏のお話は、韓国の徴用工判決から和解についてなど多岐にわたった。

■全編動画

  • 登壇 志葉玲氏(ジャーナリスト)×内田雅敏氏(弁護士)
  • タイトル 韓国叩きおかしくない? 徴用工問題の本質と和解への道
  • 日時 2019年10月5日(土)14:30〜16:00
  • 場所 スペースコウヨウ(東京都国立市)
  • 主催 志葉玲ジャーナリズム研究会(詳細、Facebook)

2018年10月30日、韓国の最高裁から下された、新日本製鐵への損害賠償を求める判決をおさらい!

 日本の対韓半導体輸出規制に始まった、日韓の報復合戦。まずは、その発端とされる、韓国の大法院判決からおさらいしよう。太平洋戦争中に日本で強制労働をさせられた韓国人の元徴用工4人が、雇用者であった新日本製鐵に損害賠償を求めた訴訟でのこと。2018年10月30日、韓国の最高裁に当たる大法院は、原告の主張を認め、新日本製鐵に対し、1人あたり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じた。

 大法院がこの判決を下すにあたって用いた論理は、内田氏によると、主に以下の3つである。

 1つ目は、日本は植民地支配を合法としているが、日本の韓半島と韓国人に対する植民地支配は“違法”だった、ということ。

 2つ目は、日本は1965年の「日韓基本条約」とともに結ばれた「請求権協定」で、韓国に行った5億ドルの“経済支援”が“元徴用工への賠償”に当たると主張しているが、植民地支配に基づく強制労働の慰謝料は、5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)の“対象外”だった、ということ。

 3つ目は、日本政府は両国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決された」と断言しているが、「請求権協定」で破棄されたのは“外交保護権”(国が国の国家責任を追及できる国際法上の権限)であって、“個人請求権”(被害者個人が加害企業に賠償を請求出来る権利)は破棄されていない、ということである。

日本政府の見解そのものでもある、韓国司法の徴用工裁判判決。「個人請求権は破棄されていない」と、91年当時の柳井外相も認めている!

 日本メディアは韓国大法院の判決を、「終わった話を蒸し返す不当な判決」としてこぞって批判した。しかし内田氏曰く、大法院が用いた論理のうち、2つ目と3つ目は、日本政府の見解そのものでもある。

 1965年当時の外相・椎名悦三郎氏は、1965年11月19日の参議院本会議で「無償3億ドルは独立祝い金であって、植民地支配の清算金ではない」と答弁している。

 1991年の参院予算委員会答弁では、外務省の柳井俊二(やないしゅんじ)条約局長が、日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決した」の解釈について、「これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権行使として取り上げることが出来ない、という意味でございます」と回答した。

 このように、韓国大法院が新日本製鐵に損害賠償を請求した根拠は、内田氏の指摘の通り、従来からの日本の見解とも一致することが分かる。それにもかかわらず、日本政府が今更ながらこの判決を不当だと、どうして訴えられようか。

中国人強制連行と和解。内田弁護士「和解は和解の成立によって終わるのではなく、和解事業の遂行によってその内容を深めることができる」

▲左:弁護士・内田雅敏氏、右:ジャーナリスト・志葉玲氏(2019年10月5日、IWJ撮影)

 内田氏の配付資料によると、中国人強制連行に関しては、花岡和解、西松広島安野和解、三菱マテリアル和解など、加害企業が被害者に賠償金を支払った例がいくつかあるとのこと。

 中国人被害者の請求権について、1972年に結んだ「日中共同声明」で、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としたことから、外交保護権は放棄されている。

 2009年の西松広島安野和解を例に挙げると、最高裁は、破棄された外交保護権に基づき、賠償請求を棄却した。しかし、判決に「被害の重大性を考えると当事者間の自発的解決が望ましい」という一文が付け加えられ、最終的に和解が成立した。西松広島安野和解は、「日中共同声明」という国家間合意を個人が見直し、加害企業と被害者で和解をした例である。

 日本政府は、中国人強制連行に関するこれらの和解には異議を唱えていない。それにもかかわらず、徴用工問題の和解を求める韓国側の判決には首を突っ込み続けている。

 これに関して内田氏は、「諸々を考えれば、1965年の日韓基本条約の見直しに向き合わざるを得ない」と述べた。

 さらに「西松広島安野和解の実践で、和解は和解の成立によって終わるのではなく、和解事業の遂行によってその内容を深めることができる、ということが見えてきた」と、繰り返し訴えた。

「請求権協定」を自分たちの都合の良いように使い分けてきた日本政府!曖昧な表現は、原爆訴訟の責任から逃れるため!?

 韓国の判決を不当だと訴えるにあたって、これまで日本政府は、「個人請求権」を自分たちの都合の良いように使い分けてきた側面がある、と内田氏は指摘する。

1951年のサンフランシスコ講和条約にも、請求権を互いに放棄する条項があった。この条項により、国内の原爆被害者が米国に賠償請求できなくなったとして、日本政府に補償を求めて提訴した。その際に日本政府は、「個人請求権」は失われていないので、国に補償の義務はない、という主張をした。つまり、韓国には「解決済み。よって保証はできない」としておきながら、自国民には「米国に行って保証してもらえ」と言う態度をとり続けてきたのである。

内田弁護士「隣国全てが友人になるのが究極の安全保障! 歴史問題の解決こそが日本の安全保障につながる!」

 日本が植民地支配を合法として問題解決に取り合わないことについて、内田氏は、「歴史の問題は、経済、そして安全保障の問題に波及する。隣国全てが友人ということは、究極の安全保障。そういった意味で、歴史問題の解決こそが信頼関係をもたらし、経済を活発にし、安全保障の問題に資する」と語った。

 現に、徴用工問題を発端とした日韓関係のこじれが、インバウンド消費の打撃という経済的悪影響をもあたらし、GSOMIA破棄という安全保障問題に発展したことは誰の目にも明らかな事実である。

志葉氏「日本の安全保障を考えれば、韓国とけんかしてる場合ではない! 韓国と手を取って未来を見るべき!」

 今回の勉強会を主催した志葉氏は、過去の安倍総理の発言を取り上げ、以下のように締めくくった。

 「北朝鮮の内部情報収集を韓国に任せっきりにしている日本の安全保障を考えれば、韓国とけんかをしている場合ではない。『拉致問題解決は最重要課題』、『未来志向の日韓関係を』などと言うのであれば、韓国としっかり手を取って未来を見るべきだ」

内田弁護士「地理的にも非常に近い関係である日中韓。憲法9条・戦争の放棄などをアジアの平和資源に!」

 内田氏は最後に、一衣帯水(いちいたいすい)、一葦の水(いちいのみず)という言葉を紹介した。これはどちらも幅の狭い水の流れを表す言葉だが、「日本と中国、そして日本と韓国は、この言葉のように、海を挟んで地理的に非常に近い関係である。このような言葉や、日本国憲法第9条・戦争の放棄などを、我々はアジアの平和資源として活用していかなければならない」と訴えた。これは、上述の「隣国全てが友人」と通ずるところがあるのではないか。

 内田氏は、日本が植民地支配を合法としていることについてのIWJ記者の質問に対し、「日本の植民地支配を国際法上合法とするのなら、アメリカの奴隷制度は当時合法だったと同じように言えるのか」と問い返す形で答えた。植民地支配とは、植民地化した人々を奴隷化するに等しい暴挙であるということだ。

 河野太郎外相が、2018年の大法院徴用工判決に対して「国際法に照らせばありえない判断だ」と発言したのは記憶に新しい。しかし、国際法に照らせば、植民地支配という重大な人権侵害を合法とすることこそ、言語道断ではないか。

 今回の勉強会は、「韓国叩きおかしくない? 徴用工問題の本質と和解への道」というタイトルで行われた。内田氏も、自分に取材に来た多数の韓国メディアと違って、問題の本質に迫ろうとする記者の少ない日本メディアの現状を憂えていた。

 岩上安身は、韓国を叩くだけの日本メディアの危険性について指摘し、発信する神戸女学院大学名誉教授・内田樹氏にもインタビューを行っている。こちらも是非ご覧いただきたい。

 徴用工問題については、弁護士の岩月浩二氏に岩上安身がインタビューを行ったほか、ご本人にも特別に寄稿していただいている。詳しくは以下の記事をご覧いただきたい。

 さらに「メディア」「徴用工」「慰安婦」「歴史認識」をテーマに滋賀県立大の河かおる准教授に岩上安身がロングインタビューを行い、日韓対立の根本原因を探っている。こちらもぜひご覧いただきたい。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です