訴権濫用による違法なスラップ訴訟に対し、岩上安身が300万円の損害賠償を橋下氏に求め反訴を提起! 第三回口頭弁論で、坂仁根弁護士がおこなった弁論要旨 2018.12.8

記事公開日:2018.12.8 テキスト
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 2018年8月23日午前11時より、大阪地裁第1010号法廷にて、橋下徹氏によるIWJ岩上安身へのスラップ訴訟「平成30年(ワ)1593号 損害賠償請求事件」の、第三回口頭弁論がおこなわれた。なお、この日に先立つ8月13日には、岩上安身が反訴原告となって橋下徹氏に対し、損害賠償を求める反訴「平成30年(ワ)第7160号 損害賠償請求反訴事件」を提起している。

 弁護団が提出した被告準備書面(2)と、反訴内容の要旨を掲載する。なお、この日は坂仁根弁護士が、後半の「反訴について」に該当する部分の弁論をおこなった。

橋下氏が言う「自身の権利救済・名誉回復」は裁判用の方便にすぎない

第1 被告準備書面(2)について

 今回提出の被告準備書面では、橋下氏が本件訴訟の目的は自身の権利救済・名誉回復にあると主張していることに反論するとともに、名誉毀損の判断基準や名誉毀損の違法性阻却事由(公益性、真実相当性)等について被告岩上氏の主張を補充した。

1. 橋下氏が言う「自身の権利救済・名誉回復」は裁判用の方便にすぎない

(1) 橋下氏の行動は、原告の主観を推知させる重要な間接事実である

 橋下氏は、被告岩上氏が第三者のツイートをリツイートしたことに対して、削除要請も、交渉も一切おこなわず、いきなり提訴に踏み切った。橋下氏は、本件訴訟の第一義的な目的を「被告の違法な名誉毀損行為に対する自身の権利救済・名誉回復」としつつ、本件提訴経過については、「内容証明を出すかどうか、他の権利救済の方法によるべきかどうかは被害者が独自の判断で決める話であり、裁判による権利救済を求めるに際し、何か制約・条件等があるわけではない」などと述べて、唐突な提訴を正当化している。

 しかし、橋下氏が本当に「自身の権利救済・名誉回復」を考えて提訴したのかどうかは、橋下氏の提訴前後の行動からも読み取ることができる。

(2) 橋下氏は元ツイート主に削除要請を行っていない

 橋下氏が自らの名誉回復を最優先に考えていたのであれば、真っ先に、ツイート主に削除要請をおこなって被害の拡散を食い止めようとしたはずである。元ツイートを削除すれば、リツイートも削除されるからである。しかし橋下氏は、元ツイート主に削除要請もせず、現在も元ツイートを放置している。

(3) リツイートから47日も経過し、削除されたにもかかわらず提訴している

 提訴時点ではすでに被告岩上氏のリツイートは削除されており、そのことは橋下氏も承知していた。それにもかかわらず、橋下氏は、岩上氏のリツイートから47日も経過した後に提訴に踏み切っている。

(4) インターネット上の表現等について削除要請もしていない

 元ツイートは、講談社の雑誌フライデーの「私の同僚は橋下府知事に追い込まれて自殺した」という記事に拠って「自殺に追い込む」という表現を使っていた。これは7年前の記事だが、今でも掲載され続け、2018年7月22日の時点で「橋下 自殺」というキーワードで検索すると、この記事が最上位でヒットする。

 ところが、橋下氏は、岩上氏よりも遙かに情報拡散力がある講談社に対して、この記事を削除するよう要請することもなく、放置しているのである。

(5) 橋下氏はリツイートの内容を自らツイッターやメルマガで拡散している

 橋下氏は、提訴後の2018年1月21日、22日になって、突如ツイッター上で岩上氏への反論を始めた。そこでは、「知事である僕のせいで府の職員が死んだ」、岩上氏のリツイート内容は「橋下が府の幹部を自殺に追い込んだ」というものであると自ら記述し、それを拡散している。また、橋下氏が発行する有料メールマガジンでは2回にわたり、岩上氏のリツイート内容は「橋下知事は府職員を自殺に追い込んだ」というものだと説明している。

 橋下氏のツイッターのフォロワー数は200万人を超え、岩上氏の18万人を遙かにしのぐ。また、メルマガ読者数も相当多数に及ぶ。橋下氏がこれらの媒体で自らリツイートの内容を紹介しているのは、結局は、このようなツイートでは社会的評価が低下しないと橋下氏自身が考えているからにほかならない。

(6) 小括

 このような橋下氏の言動からすれば、橋下氏が掲げる「名誉毀損行為に対する自身の権利救済・名誉回復」なる目的は、裁判用の方便に過ぎないことが明らかである。

大阪市に問い合わせれば、本件リツイートの虚偽性は容易に判明した!?

2. 名誉毀損該当性の判断基準について

 名誉毀損が成立するか否かは、「一般読者の普通の注意と読み方を前提に、当該表現が対象者の社会的評価を低下させるか否かによって判断される」という昭和31年7月20日の最高裁判例を前提にしても、その判断に当たってはインターネット上の表現の特性を考慮すべきであると考える。

 そして、一般閲覧者は、リツイートを「ツイート主の表現・論評を、紹介・媒介した行為」と理解し、「元のツイート主と全く同様の立場でツイートした」とは理解しないのであるから、リツイートにより名誉毀損が生じることもあり得ない。

3. 被告のリツイートには公益性がある

 橋下氏は、「大阪市に問い合わせるなど簡単な調査方法で本件リツイートの虚偽性は容易に判明したにも拘らず、岩上氏は何ら調査をせずに本件リツイートをしているので、公益性がない」と主張する。しかし、社会的影響の大きな人物につき、その資質に疑問を提示し、人物評価への公的意見の形成を目指す本件リツイートに公益目的があることは明らかである。橋下氏自身も2018年2月6日発行のメルマガにて「僕への批判一般は、公共性・公益性は認められるだろうね」と述べている。

 ところで、本件訴訟において、大阪府は裁判所からの文書送付嘱託に協力しなかった。橋下氏が言うように、大阪府に問い合わせれば容易に回答が得られるのであるならば、ぜひ橋下氏からも大阪府に、文書を提出するよう説得していただきたいものである。

※文書送付嘱託(ぶんしょそうふしょくたく)とは、民事訴訟手続における、書証の申出方法のひとつである。裁判所が、本案訴訟の一方当事者の申立てに基づき、文書の所持者に対し、所持する文書の提出を求める。(ウィキペディアより)

4. 橋下氏のスラップ体質が準備書面にも表われている

 橋下氏は第1準備書面5頁にて、岩上氏が本件訴訟のことをスラップ訴訟であると主張することにつき、「被告の今後の対応いかんによっては、かかる事実についても追加して請求することになる」と述べ、請求の拡張をほのめかしている。岩上氏は現れた事実に対し見解を表明したにすぎない。この意見表明を名誉毀損と決めつけ、意見表明を止めなければ金銭請求するということ自体が新たなスラップと言える。橋下氏のスラップ体質が、この一言に凝縮されていると言える。

橋下氏に対し損害賠償金300万円の支払いを求め反訴を提起!

第2 反訴について

 岩上氏は、橋下氏の訴えはスラップに当たり不法行為を構成するとして、損害賠償金300万円の支払いを求める反訴を提起した。その要旨は次のとおりである。

1. 本訴提起の違法性について

(1) 訴えの提起は一定の場合、不法行為を構成する

 最高裁判例によれば、訴えの提起自体が不法行為を構成する場合がある。「訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」である。そしてスラップとは「言論活動を含む公共的・社会的活動の妨害を目的とする戦略的訴訟」を言う。

 名誉棄損訴訟においては、表現行為の内容が原告の名誉を棄損する事実が認められないことを知りながら、被告の表現行為抑圧を主たる目的としてあえて訴えを提起した場合や、真実性・真実相当性の抗弁事実が認められることが明らかであることを知りながら、被告の表現行為抑圧を主たる目的として、あえて訴えを提起した場合は、訴えの提起はスラップとして違法になるのである。

(2) 橋下氏による提訴の違法性は明らかである

A 橋本氏の主たる目的

 橋下氏は、岩上氏のリツイートが名誉棄損にあたるとして、損害賠償を求めている。しかし、本件リツイートの内容それ自体は岩上氏のものではなく、元ツイートを、岩上氏が紹介・媒介したにすぎない。橋下氏が真摯に名誉回復を求めるなら、本来訴えるべきは元ツイート者のはずである。

 それにもかかわらず、橋下氏が岩上氏のみを提訴してきたこと自体、その主たる目的が名誉回復にあるのではなく、岩上氏を威嚇し、その表現行為を抑圧することにあったことを物語っている。

B 本件リツイートは橋下氏の社会的評価を低下させないと橋下氏は知っていた

 先ほど述べたとおり、「自殺に追い込む」という元ツイートの表現それ自体は、2011年当時、雑誌や新聞広告等により広く流布されていた上、その状態は今日まで継続している。したがって、橋下氏の社会的評価は、本件リツイートによって低下したとは言えない。

 なお、橋下氏がこれら表現行為に対して損害賠償請求を一切おこなっていないことも、先ほど述べた通りである。また、大阪府知事として膨大な情報に接していた橋下氏が、本件リツイートによる社会的評価の低下がないことを、提訴時においても知っていたことは明白である。

C 真実性・真実相当性の抗弁が成立することを橋下氏は知っていた

 仮に岩上氏のリツイートが橋下氏の社会的評価を低下させるとしても、岩上氏には真実性・真実相当性の抗弁が成立することを橋下氏は知っていた。

 (a)橋下氏が知事時代、年上の幹部に対しても横柄な態度をとることがあったこと、(b)大阪府幹部の自殺事案が発生したこと、(c)その点に関し、反訴被告が「追い込んだ」と評価される側面のあったことは、真実そのものである。したがって、そのような内容をリツイートしたにすぎない反訴原告岩上氏には、真実性・真実相当性の抗弁が成立する。そして、これらの事実があった当時府知事を務めていた橋下氏は、当然に抗弁が成立することを知っていたと言える。

 これらの事情に鑑みると、反訴被告の提訴は「スラップ」として訴権の濫用にあたり、違法である。

2. 岩上氏の被った損害について

 岩上氏は、橋下氏の提訴により、弁護士探しや調査活動のため東京・大阪間の往復を何度も強いられ、多大な費用・労力・時間を費やした。年末の突然の提訴に驚き、不安に駆られ、持病である睡眠障害、自律神経失調症、心臓病を悪化させ、多大な精神的苦痛を被った。弁護士費用の負担も余儀なくされた。訴訟対応のための支出額は200万円近くに上る。これに肉体的・精神的損害を加えれば、損害の総額は少なくとも300万円を下ることはない。

 また、岩上氏が実質的に一人で運営する株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナルは、訴訟対応のため収支が悪化し、岩上氏自身の収入も大きく落ち込んだ。このような経済的損害についても、岩上氏は追加請求する予定である。

3. 結語

 以上述べたように、反訴被告橋下氏の訴え提起は不法行為にあたる。反訴原告岩上氏の請求は、当然に認められるべきである。

以上

 なお、この日(8月23日)の口頭弁論後に、大阪弁護士会館でおこなわれた報告集会については、下記の記事をご覧いただきたい。

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