「原告の訴えは、訴権の濫用にあたるスラップであり、本件請求は却下されるべきである」第一回口頭弁論で、梓澤和幸弁護士がおこなった弁論の要旨を掲載! 2018.10.24

記事公開日:2018.10.24 テキスト
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 2018年4月19日午前11時より、大阪地裁第1010号法廷にて、橋下徹氏によるIWJ岩上安身へのスラップ訴訟「平成30年(ワ)1593号 損害賠償請求事件」の第一回口頭弁論がおこなわれた。この日、被告側弁護団の弁護団長である梓澤和幸弁護士がおこなった弁論の要旨を、以下に掲載する。

第1 原告の訴えは訴権の濫用に当たり、その請求は却下されるべきである

1. 訴えの提起が違法となるケース

 昭和63年1月26日の最高裁判所第3小法廷判決は、訴えの提起が違法となる場合として、「裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる時」を挙げ、上記判例を踏襲し、東京地判平成12年5月30日は「訴権濫用に当たるか否かは、(1)提訴者の意図・目的、(2)経過、(3)主張する権利の事実・法律上の根拠の有無、(4)背景、(5)訴訟追行態度、(6)相手方の負担、など、その評価にかかわる事実(評価根拠事実)を総合的に考慮すべき」としている。

 上記規範にもとづき、被告側は以下のように主張する。

 「提訴者が実体的権利の実現ないし紛争の解決を真摯に目的とするのではなく、相手方当事者を被告の立場に立たせることにより」その表現行為を抑圧することが主たる目的であると認められる時には、「民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き、信義に反する」と言え、訴えは「スラップ」に当たるとして、却下されるべきである。そして「スラップ」に該当するか否かは、上記東京地裁裁判例のいう(1)ないし(6)の評価根拠事実を総合的に考慮して判断すべきであると考える。

2. 本件提訴はスラップ訴訟である

 原告が元ツイート者でなくリツイート者を訴えることは、ツイッタ―を用いる人々の表現言論活動を委縮させ、さらにツイッターの一般ユーザーにリツイート行為をためらわせる効果を持つことに注目すべきである。

 原告のツイッター上のフォロワーは200万人を超えており、メールマガジンを発行しており、被告のリツイートに対し、対抗言論で応じ名誉回復をはかることは容易であった。にもかかわらず原告は、元ツイート及び被告のリツイートに対し、いかなる手段でも反論も名誉回復の措置もとっていない。

 そして年末を狙うように、事前の警告も交渉もなく提訴してきた。被告は遠隔地で訴訟を提起され、交通費の負担、大阪の事情に精通する弁護士を見出すのに多大の時間と経費を要しており、今後の負担も余儀なくされる。

 原告は当然に、被告にのしかかる負担を熟知していたはずである。いきなり提訴という手段に訴えた原告の行為は、訴権濫用の成否の評価にあたり重視されるべきである。

 提訴者は、実体的権利の実現ないし紛争の解決(原告の名誉回復)を真摯に目的とするのではなく、相手方当事者を被告の立場に立たせることにより、その表現行為を抑圧することが主たる目的であると考えられる。

 原告の訴えは訴権の濫用に当たり、その請求は却下されるべきである。

第2 「公正な論評の法理」による免責

 被告のリツイートは仮にこれが被告の意思表明であるとしても、事実摘示でなく意見・論評であり、意見・論評については、表現の自由保護の見地から、すでに公正な論評の法理が判例上確立されている。

 この判例法理によれば、(1)当該(論評)行為が公共の利害に関する事実に係り、(2)専ら公益を図る目的に出た場合において(3)論評の前提とされている事実が主要な部分において真実であれば(4)人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱したものでない限り、当該論評行為は違法性を欠く(最判平成元年12月21日)のである。

1. 本件リツイートは事実摘示でなく意見・論評である

 本件リツイートの対象となった元ツイートは、大阪府知事時代に年上の部下に対し乱暴な口のきき方をしていた原告が、「丸山穂高国会議員の『言い方』を批判する資格はない」との、原告を批判する意見を表明したものである。

2. 本件意見表明には公共性がある

 原告は社会的影響の大きな人物であり、これに関する意見表明である本件リツイートは「公共の利害に関する事実に係る」意見表明である。

3. 本件意見表明の目的は専ら公益を図ることにある

 本件意見表明は、原告の評価について公的意見を形成することを目指すものであるから、公益目的を有している。

4. 根拠事実の重要部分には真実性・真実相当性がある

 本件リツイートの根拠事実の重要部分は、「原告が府知事時代に、部下である幹部たちに乱暴な口のきき方をしていた」という事実である。この意見の根拠事実の主要な部分に真実性または真実相当性がある時は、当該意見論評が原告の社会的評価を低下させるとしても、その意見表明には違法性がなく、被告は免責される。被告はこの根拠事実の立証に全力を傾注していく。

第3 原告の損害はない

 経過に鑑み、市民社会における損害の衡平な分担を期するという不法行為法の原点にさかのぼって考察すると、本件リツイートにより精神的苦痛を被ったとして、原告に被告の不法行為による損害が発生したと評価するべきではない。

第4 まとめ

 以上述べたように、第一に原告の訴えは、訴権の濫用にあたるスラップであり、本件請求は却下されるべきである。第二に、仮に訴権濫用でないとしても、被告は免責される。さらに、原告に損害が発生したとも言えない。したがって、原告の請求は棄却されるべきである。

求釈明 原告は元ツイート者に対し、ツイートの削除要請あるいは損害賠償請求をしたのか?

 原告は、「@fckisn」のアカウント名を持つ元ツイート者に対し、本件リツイートの元となったツイートの削除要請あるいは損害賠償請求をしたのか、明らかにされたい。

以上

 なお、この日の口頭弁論後に大阪弁護士会館でおこなわれた報告集会については、下記の記事をご覧いただきたい。

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