エボラ出血熱のリスクと報道のあり方――日本の危機管理体制の脆弱さを医師が指摘 2014.11.19

記事公開日:2014.11.27取材地: テキスト動画
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(IWJ・松井信篤)

 西アフリカを中心に猛威を振るうエボラ出血熱のリスクや日本の危機管理体制について、11月19日(水)、医療法人財団「綜友会」が主催する緊急セミナーが行なわれた。

■ハイライト

  • 講師 縄田和満氏(東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学)、柴田明夫氏(資源・食糧問題研究所代表、前丸紅経済研究所代表)、花見忠氏(弁護士、労働法学者、元中央労働委員会会長、元内閣府参与)、木村もりよ氏(内科医、綜友会医学研究所所長、元厚生労働省医系技官)
  • 司会 牧野義司氏(メディアオフィス「時代刺激人」主宰、元毎日新聞、ロイター通信経済記者、アジア開発銀行研究所、日本政策金融公庫コンサルタント)

感染症危機管理が十分に機能していない

 内科医で綜友会医学研究所所長の木村もりよ氏が、エボラ出血熱によるあらゆるリスクや日本の危機管理体制について説明。現代では、48時間以内にどこへでもアクセスできる環境下にあること、新興国の経済発展、気候変化などの影響により、感染症のリスクは絶対になくならないという。

 その上で木村氏は、日本における感染症の危機管理が十分に機能していないと警鐘を鳴らす。理由は、有事と平時とで危機管理の概念の区別が曖昧で、意識が極めて薄いからだという。

致死率50~90%のエボラ出血熱

 エボラウィルスは、体の中に入ってから、熱などの症状が出るまでに2日から21日を要すると言われている。発熱、頭痛などの初期症状は、インフルエンザとの判別が難しい。 他にも、吐き気、発疹が出たり、粘膜からの出血がある。

 重症になると全身からの出血、多機能不全が起こり、死に至る。致死率は実に50~90%と高く、今回の流行でもWHOが70%と報告している。発展途上国と先進国とでは、栄養状態、衛生状態、治療レベルなどが違うことから、この数字が日本に当てはまるかは不明だという。ウィルスの感染経路には、空気感染、接触感染、飛沫感染が考えられている。

最悪のケースでは2015年までに3.5兆円の損失

 アメリカのCDC(アメリカ疾病管理予防センター)は、西アフリカで1億4千万人の患者が見込まれていると予測。西アフリカ地域の人口14%が罹患し、感染者は少なく見積もって500人に1人と推定されている。この試算をもとにした世界銀行のレポートによれば、最悪の場合、2015年までに3.5兆円の損失を世界経済に与えると試算している。

効率的ではない法体系に懸念

 日本では、感染症に関する法律として、検疫法と感染症法(感染症の予防及び感染症に対する医療に関する法律)がある。また、緊急事態と認識された場合には、新型インフルエンザ法(新型インフルエンザ等対策と区別措置法)が存在する。

 木村氏は、こうした既存の法体系に基づいた仕組みは、効率的ではないと指摘する。たとえば、検疫法は国内に常在しない感染症が国内に入ることを防ぐ法律で、厚生労働省の出先である検疫所は、主要国際空港、港という外国からの玄関口に設置されている。国内になると、感染症法で地方自治体による感染症対策が行なわれる仕組みになっている。

 検疫所の職員は国際線ターミナルの制限区域に立ち入れるが、国内線旅客ターミナルには立ち入れない。感染症法に指定された感染症が発生した場合、個人や医療機関から保健所に届け、地方自治体から国へ報告するという流れになる。

 また、新型インフルエンザ流行の際も、国で決定された事項を厚労省が通知、事務連絡で各都道府県に依頼する仕組みとなっている。このような状況から、迅速な状況把握や感染症対策の一本化が難しく、平時と変わらない法令順守では、緊急時におけるリスクの拡大が懸念されるのだ。

ウィルス解析が可能な施設の必要性や報道がおよぼす悪影響

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